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更新履歴

  • 2012.08.01 ウェブに公開
  • 2002.03.24 企画発案らしい

はじめに

この企画はずいぶん前に猟奇殺人の探偵ものという依頼で作った企画で、商品化されなかったものである。依頼は 2002 年というから 10 年前の企画である。もう日の目を見ることもないということで公開した。公開の理由は他にもあって、【昼ニ照ラサレル夜】というタイトルを別の作品(翼をくださいの続編)で使いたいと思っていることと、同じくキャラクタの名前でいくつか使いたいものがあるからである。
特に主人公の【多守(たがみ)】という名前は気に入っている。

またこの企画は主人公よりも妹の方が背が高い(主人公は少年の時に成長が止まっている)という設定があって、それがお気に入りポイントである。

時代は昭和 25 年、場所は神田である。

人物配置は以下の通り。

橘 多守
主人公で見た目は中学生くらい。戦時下、死なない肉体を作る人体実験にされ、それ以降、成長が止まってしまった。戦後すぐに死んだ父親から受け継いだ骨董屋を営む。クールでニヒルでかっこつけ屋だが、妹にすごく甘い。
主人公の身体は実験以来、維持するために何日かに一回、身体の血液を新鮮な血液と取り替えなければならない。
橘 ひなた
主人公の妹。
佐々木 三千代
主人公の助手で切れ者。手で触れたものの記憶を知ることが出来る。本職は刑事だが問題刑事のため、普段は暇を出されている。
高辻 敏也
主人公の境遇を知る、国として主人公を保護する宅目を負う役人。主人公が生き続けるための新しい血を用意したり、主人公の非合法な行動を隠蔽したりする職に就いている。三千代とあまり仲が良くない。
また、主人公の存在をそろそろなくさなくてはならないのではないかと考えている。

基本ルート

導入

汽車が通るたびに地響きがとどろく。今にも崩れてきそうな本と書類と……骨董品に囲まれて、少年は徹夜明けのうつろな目を上げた。
しかしこれはいつものことだ。
骨董屋の仕事は、骨董品を売るだけじゃない。
なんと言って骨董屋の醍醐味は、その目と鼻で、とんでもないお宝を探し当てることにある。
もっとも、橘 多守はその点、他の骨董屋と少し違っていたが……。

神田のしみったれた商店街の一角に骨董屋を構える多守は妹のひなたと二人で暮らしている。いつも薄暗い店の奥で、日がな一日調度品や骨董品と嫐ている。一方のひなたと言えば、多守とは対照的で活発な女の子。明るく、友達も多い。
物語はそんな多守の元に、西洋風の陶磁器が持ち込まれる所からはじまる。
鑑定主は初老の男で、名前だけ告げると1週間後に取りに来るので、それまでに鑑定を頼むと言い残して去っていった。
もともと日本や中国の陶磁器に詳しい多守は、西洋の骨董は専門外。鑑定にはいろいろ苦労する羽目になる(西洋骨董専門の助手の三千代からいろいろとからかわれる)。そして、六日が過ぎた夜、多守の店に賊が入りあやうく鑑定品を盗まれそうになるが、すんでの所で多守は賊を撃退する(このとき賊を誤って殺してしまう)。
しかし翌日になっても、持ち主が現れず、多守は持ち主を捜す羽目に。刑事でもある三千代のつてを使って賊の身元を頼りに調べると、壺の盗難届が出ていることを知る。盗難届を出したのは、ひなたが通う学校だった。

事件

ある日の放課後、妹と一緒に壺を届けに行く多守。理事長に直接手渡しながら、鑑定の結果を報告する。ここで自分が殺した賊はこの学校の教師であることを知る。
帰り際、理事長から学園内に大量の骨董品があるから鑑定して欲しいと依頼される。学園内をざっと案内され、またいくつかの品物を託されて学園をあとにする。また、このとき学園内に自由に出入りする許可をもらうことに。
帰り際、妹から友達二人(聖泉と暁子)を紹介される。
三千代の協力もあって、学園からもって帰った骨董品は価値が高いものだと判明する。大口のお客さんの登場に期待をふくらませる多守であった。

翌日、高辻に連れられて、警察病院での定期検査へ。多守の戦中での立場や、見た目は妹より幼いのになぜ兄なのかなどの説明がなされる。警察病院とは言っても、戦中どんなことに使われたのかは想像に難くない。そう言う意味では、薄気味の悪い場所である。
三千代に身体検査を受ける傍ら、彼女が担当している事件の話を聞く。身体を切断されたという気味の悪い事件で、警察も投げ気味だと言う。当時、心理学やプロファイリングなどの学問が確立していなかったため、都内の気持ちの悪い事件は軒並み三千代に回ってきたのだった。
警察病院からの帰り、高辻も三千代が担当している事件を知っていて、新聞の話などで盛り上がる(帝銀事件や下山事件なども交えながら、当時の治安の雰囲気を説明)。

翌日学園へ行く多守。いくつかの鑑定品を理事長の前で説明していると、一人の教師が青ざめた表情で入ってきて、女生徒のバラバラ死体が捨てられていることを報告する。バラバラ? まさか、昨日三千代が言っていた……と多守は思いを巡らせる。
しかし死体は多守の予想と少し違っていた。つなげたあと、そして魔法陣。まるで何かの儀式に使ったかのような、そんな印象だった。 理事長は捜査は警察に秘密裏に行ってもらうことを伝え、また多守にも他言しないように言う。名門校が殺人事件──しかも四肢を切断するような──の現場となったのではイメージも悪くなると理事長は説明する。

調査

日がな一日、学園の骨董品を鑑定する多守。殺人事件も、学園の事情も正直多守にはどうでも良かった。気になることと言えば、殺人事件が起きた学校に妹を通わせることだった。
そんなある日、妹たちから寮生が行方不明になっている噂があることを聞く。詳しく聞くと、学園内には黒魔術に関係する様々な伝説が残っており、行方不明になった生徒はそれの餌食になったとのもっぱらの噂だった。また、悪魔を見たという生徒もおり、学園内での黒魔術の信憑性はそこそこ高いという。
かくいう妹のひなたやその友人の聖泉、暁子もその手の噂には敏感で、興味津々だった。そして三人で真相を確かめようなどと言い始める。これには多守も猛反対。現に生徒が殺されているのだ。しかしそう言うことに現実感が沸かない三人は多守の警告など意に介そうともしない。
余りにも放っておけないので、多守は三人の戯言に協力することに。
ピアノが勝手に鳴ると聞けば、行って調べ、西棟の女子トイレに何かいると聞けば、わざわざ女装して入り……多守はなんだかばからしいと思いつつもこの三人の探偵ごっこに付き合うのだった。

しかし学園内を歩き回ってみて、多守はいろいろな力関係を目にする。特に理事長の娘の存在は大きく、清楚で優秀ともっぱらの評判で、多くの生徒達から羨望の眼差しで見られる一方、一部の生徒からは恐れられていたりするという二面性持っているらしい。母である理事長との関係も、本当の母子ではないような言葉遣いで、どこかよそよそしさを多守は感じていた。

そんなある日、ブンヤとおぼしき外人が多守の店にやってくる。骨董のことが良く解らないらしく、陳列されている商品をぞんざいに扱われ、多守は思わず慌てるが、当の本人は全く気にとめない様子で、握手を求めてきた。
アイリーンと名乗る彼女は、戦後の日本を取材していると語り、たまたま神田の商店街を歩いていたら、この骨董屋に出交したのだと語った。彼女はどう見ても10代前半に見える多守が店を切り盛りしているのに興味を持ち、多守の事を根掘り葉掘り尋ねてくる。
結局なし崩し的に、一緒に酒を飲みに行くことに。

飲みに行く場所は決まっている。なぜなら多守が安心して酒が飲める場所は、そこしかないからだ。
アイリーンは戦後の渾沌に乗じて起きている事件を追っていると語り、ただの行きずりや成り行きの犯罪ではなく、アメリカや戦犯が関わっていそうな事件をターゲットにしていると切り出し、三千代が担当しているバラバラ殺人事件について話し出した。
気持ち悪い話だと思いながらも、なぜそれが陰謀と関係するのか訪ねると、同じような事件がヨーロッパを取材したときに見てきたからだと言う。もっとも当時下っ端だったアイリーンは担当記者の助手としてくっついていただけで、自分で取材したわけではないから、真相はわからなかったという。
多守は偶然の一致だろとバカにするが、学園での事件のことが頭から離れなかった。犯人が捕まっていない以上、多守の中ではバラバラ事件は現在進行形なのだ。そこで多守は悪魔とか気が触れた人間の仕業かもしれない、と少し水を向ける。
すると今度は逆にアイリーンが多守をバカにする。中世の田舎町じゃあるまいし、ここは曲がりなりにも東京だと。

いつもの鑑定作業。学園へ赴き、午前中は「うん」とか「ほうほう」とかいいながら、価値のある物品を物色してゆく。お昼はもっぱらひなた達と中庭で食べるのが日課になっていた。
この日は沙織とエンカウント。ひなたは自慢気に多守を紹介するが、あまり目立ちたくない多守はひなたを制する。このとき、暁子が沙織を見ようとしないことに互いは気付いた。暁子も沙織を恐れる一部の生徒なのか? 多守はそんなことをふと思う。
件の殺人事件は遅々として操作が進んでいないようで、学園が警察の行動をそれなりに制限しているのだろうと多守は推測していた。
午後は自分の店に戻り、骨董屋を開ける。
そもそも金持ちや道楽相手の商売。午前中に店を開けても客などこない。
だが、この日は鑑定に夢中で夜遅くなってしまう。あわてて帰ろうとすると、本部棟の正面に進駐軍のものと思われる高級車が止まっていた。本部棟を見上げると、理事長室だけ明かりがついている。少し興味の湧いた多守は理事長室をのぞこうとすると、理事長室から沙織がアメリカ軍の偉そうな人物と一緒に出てくる。
アメリカ人は応接室に通され、そこには別の生徒もいるらしく、3人の声が聞こえてくる。その後、応接室で行われる情事。多守は面食らいながらも、妹をさっさと別の学校へ編入させようかなどと思う。

展開

翌日、いつものように鑑定をしていると、沙織が接触してくる。昨日の夜、遅くに学校から出て行くのを目撃されていたらしい。沙織に何処まで知っているのか尋ねられるが、しらばっくれる多守。すると、こなれた手つきで沙織が多守に迫るので、多守はそのまま沙織を犯してしまう(沙織はフェラだけするつもりだったらしい)。
沙織から、売春の事実を聞き出す。その言葉の中から、彼女自身が背伸びをしていることや、母親である理事長に使われていることにストレスを感じていることを多守は読み取る。
昼食時、聖泉から昨日の夜、寮に戻ってきてない生徒がいるという噂を聞く。同じ寮で生活している暁子は知らない様子なのだが、その演技が多守には白々しく見え、暁子は何か知っているかもしれないと確信する。
その日の夜、理事長の許可を取って聖泉と暁子が多守の店に泊まりに来る(暁子がかなり遅れてくる)。修学旅行気分で、うきうき気分の三人。黄色い声が建物中に響いて仕事が出来ないなどと愚痴を漏らす多守。

翌日、廊下に並べてある銅製の彫像を鑑定していると、ひなたと聖泉がやってくる。授業をさぼったことのない暁子が、授業がはじまっても戻ってこないというのだ。そういう二人も授業をさぼっているじゃないかと思いつつ、多守は暁子の捜索に手を貸す。
すると、校舎の片隅の女子トイレで沙織にもてあそばれている暁子を見つける。ここで暁子が売春に利用されていることを知る。だが、ひなたにはとりあえず黙っておくが、一緒にいた聖泉はだいたいの事情を知ってしまう。
放課後、暁子に話を聞いてみると、家が貧乏なことや沙織には逆らえなかったことなどの心の内を吐露する暁子。この学園の裏側の事情というのをある程度理解する。また暁子の話によれば、行方不明になった生徒は心当たりがあるだけでも、他に何人おり、それらは皆寮生であることを告げる。

さらにその夜、アイリーンから学園に関する黒い噂を聞きつける。アメリカ人が出入りしていること、軍関係が絡んでいること、さらに理事長の夫が戦犯であることなど。

三千代と高辻に協力してもらって、行方不明になった生徒の身元を調べる多守。学費の支払いがあまり良くないこと、生徒と親が不仲であること、社会的に裕福でないなどの共通点を見いだす。

そして、暁子が行方不明となってしまう。

正体

多守は聖泉が暁子の秘密を知っているのを懸念して、理事長に聖泉を自分の家から通わせるように言うが、理事長は聞き入れず。多守はついに堪忍袋の緒が切れ、警察の介入を試みるが、妙な所から警察に圧力がかかっていると高辻が忠告する。

高辻とアイリーンを通して、警察に圧力をかけている存在を捜査するウチに、理事長の夫が校長であり、その人間がアメリカから庇護を受けていることを突き止める。さらに捜査を進めると、その人物は 731 部隊に所属していた医者であることも解る。
校長は名前を伊東基景と言い、顔写真から、最初に多守に鑑定を依頼した人物であった。さらに調べを進めると、戦中、彼は死なない兵士を作る計画を割り当てられており、さらに彼の直属の部下として、また技術顧問として多守はとんでもない名前を見つけてしまう。
佐々木三千代。まさか? 多守は三千代に過去のことを尋ねると、軍医だったことだけを三千代は答えた。その日、ついに暁子の死体が上がってしまう。
同時に行方不明になる聖泉とひなた。そしてぷっつりと、三千代とも連絡が取れなくなってしまう。

三千代に不信感を寄せる多守。方々手を尽くして、捜索するが三千代の消息はつかめず、ひなたと聖泉の行方は解らなかった。そうこうしているうちに、聖泉の死体が上がってしまう。
さすがに事件は隠し続けることは出来なくなり、虚偽妄想化した噂も相まって、学園での不祥事が巷でささやかれるようになっていた。アイリーンもこの事件には興味津々で、学園のことを嗅ぎ回り始めていた。
そんな矢先、沙織が青ざめた表情で多守の元にやってくる。学園が事件が大きくなったことで、売春のことを口封じにかかっており、自分も命が危ないかも知れないと沙織は言う。まさか、実の子を殺すのかという多守の問いに、自分は養女で血はつながっていないと沙織は告げる。行方不明になった生徒、殺された生徒は何らかの形で売春に関わっていると言うのが、沙織の話だった。
やはり犯人は校長の伊東基景か?
沙織の強い願いで、多守は沙織と一緒に夜を過ごすが、沙織は拉致されてしまう。拉致したのは、三千代だった。

高辻が三千代の家の場所を通知してきたのは、夜も明けきり、昼も過ぎ、夜になってからだった。警察に無駄な借りを作ってしまったとぼやく高辻。
廃屋と化している洋館。東京の近郊に、三千代の家はあった。
そういえば、前後のごたごたで、家を手に入れたと三千代が前に言っていたのを思い出す多守。
踏み込むと、中が明るかったことに多守は驚く。
そう、窓からは日の光が照りつけているのだ。
多守は不思議な気持ちになりながらも、一つ一つの部屋を調べ、ついに地下室にたどり着いた。中から三千代の声が漏れてくる。
そして、三千代の声がひなたの名前を呼んだ、そのとき、多守は全てを確信し、地下室になだれ込んだ。
地下室の中は異世界のようだった。鼻を突く異臭。死体のにおい、様々な薬品のにおいが混ざり、もはや何のにおいを嗅いでいるのか解らない。巨大な魔法陣と、たくさんの試験官、そして中央にはひなたの切断された死体。その死体を弄ぶように立っている三千代。 多守は一瞬身が固まった。すると、三千代が凄い剣幕で多守に詰め寄る。
なぜ入ってきた? 儀式が中断された! なんてバカなことを! と取り乱す三千代に多守はただ黙って見極めようとしていた。
なぜ彼女がそんなことをしたのか?
だが、目の前の三千代はただ気が狂ってるとしか、多守には思えなかった。
多守は三千代に向かって銃の引き金を引いたのだった。

終結

刑事殺しの罪で、多守は刑務所に入れられる。納得のいかない多守は、高辻にくってかかるが、高辻はすでに多守の存在を日本政府が疎んでいることを告げる。戦前のような体制ではなくなり、魑魅魍魎(この場合の魑魅魍魎というのは、本当の妖怪とかそう言うのではなく、政治にしろ犯罪にしろ隠されてきたと言うこと)が群雄割拠する時代は終わろうとしている。多守のような得体の知れない存在は、少しずつ消えていくべきなのだと。
そう言う意味では今回の事件は、政府にとっては非常に都合がよかったと、高辻は言い、三千代も処分できた結果に満足しているようだった。そして、高辻が独自で調べた事件のあらましを、多守に伝える。

一番最初に多守の所に鑑定を依頼しに来たのは、理事長の夫であり校長の伊東基景。彼は、戦中 731 石井四郎の部隊に属し、三千代の上司であり、三千代に不死の兵士の研究を託した人物であった。敗戦後も彼はその夢にとりつかれ、731部隊の研究成果をアメリカ軍に譲渡する代わりに、戦犯からの指名を逃れていた。
しかし、彼の中で妄想と化したホムンクルスの夢は年を追う事にふくらんで行き、やがてそれは妄想だけでは留まらず、現実に実行していくようになる。そんな矢先、自分の学園に、ホムンクルスが入学して来る。そう、橘 ひなたである。
彼はひなたが三千代の作品であることを確信し、三千代と接触するために保護者の家を訪ねた。しかし、そこにいたのはやはりホムンクルス(多守)であった。伊東は骨董品をあずけ、三千代がそれに気付いてくれることを期待した。

一方、多守が殺してしまった教師は、売春のことを知っており、伊東を影で調べていた。学校の骨董品を持ち出したことで、それが売春の報酬と関係があると思いこみ、多守の店に押し入ったのだった。

そして多守が骨董品を学園に返しに行ってしまう所から、事態はぱたぱたと進んでしまうのである。
骨董品を鑑定していくウチに、三千代は伊東と接触してしまう。
伊東はいくつかの女生徒を三千代に提供する代わりに、ホムンクルスの秘伝を教えるように依頼する。人間の身体が必要だった三千代はそれを、最終的には承諾してしまう。なぜ必要なのか?
それはひなたと多守の身体を維持するためには、他の代替する身体が必要だったからである。
つまり、一連の事件はひなたと多守を生き続けさせるために起こされた事件であった。三千代がひなたを殺したのではない。沙織の身体を使って、ひなたの身体を入れ替えていたのだ。
この入れ替えることをしなければ、いつか多守も死ぬだろうと、高辻はそう最後に言葉をしめた。そして、それまで多守はここにいることになるだろうと言い残し、高辻は刑務所をあとにした。

後日談

刑務所で死を待ち続ける多守。本来、定期的にメンテナンスをしないと、多守は死んでしまうはずだった。しかし、一向に死が訪れる気配がない。刑務所に幽閉されてから、どれくらいが立ったか解らないが、面会人が訪れる(実際は2,3ヶ月しか経っていない)。
面会人はアイリーンだった。彼女はその後も事件を追い続けていたと説明し、特に三千代の身辺の情報がまとまったから教えに来たと言う。既に生きることに興味をなくしていた多守は、相づちを打つくらいで全く耳を貸さなかったが、アイリーンは淡々と話し続け、ホムンクルスの奥義について語る。それは、人間の中には設計図があって、その設計図通りに復元すれば同じ人間が作れることを三千代は突き止めていたというもので(要するにクローン)、その技術を盗まれないためにも魔術的な儀式でカモフラージュしていたと。そして最後に、三千代の部屋から発見された古い魔道書を取り出して、それを多守に託す。
読んだのか? という多守の言葉にアイリーンは途中でワケ解らなくなって、挫折したと答え、さらに多守になら解るかも知れないと言い残し、アイリーンは去っていった。
受け取った魔道書は 1600 年に書かれたモノで、ラテン語だった。そこには当時の最先端であろう人体のことが書かれており、そして人を作る方法が解説されてあった。人体のパーツは一連のバラバラ殺人事件の通りであり、そして描かれる魔法陣はまさに事件の時のものだった。
そして定期的に必要なメンテナンス。身体に付いた魔法陣の消し方、メンテナンスなしに永遠に生きられるようにする方法へと続いていく。それは、まさに自分にされてきたことだった。そして三千代がひなたにしようとしたことも……。

数年後、多守を引き取るという人物が現れる。他言無用と、出所後も日本政府に尽くすことを条件に、多守は釈放される。久しぶりに直視する、太陽。その明かりの下に待っていたのは、三千代と……そしてひなただった。

夢を見ているようだ、まるで狐に化かされているような、と多守は言葉を漏らす。すると、三千代は狐じゃないわよ、魔法よと言うと、ニッコリと笑った。

おまけ

 2004年夏、神田──
 まだ骨董屋はそこにあって・・・二人の姿はまだそこにあって・・・
 それから・・・・

※基本ルートではアイリーンの正体は、結局記者のままにする予定です(GHQがらみの話はナシ)

アイリーン・ルート

 多守が自分と三千代についてつぶさにアイリーンに情報提供をすると、アイリーンから情報部(CIAの前身)へのコミットメントがとれる。アイリーンの正体は戦中に行われていた様々な人体実験の捜査であり、これらはほぼアメリカ陸軍に流れてしまっていた。
情報部としても今後の諜報活動に於いて、これらの情報を活用したいと焦っており、戦中の人体実験によって、成長が止まってしまった(と言われている)多守に近づいたのだった。
物語としては、刑務所に幽閉された多守を迎えに来るのは三千代とひなたではなく、アイリーンであり、その後 GHQ のとある部屋に通されて種明かしがおこなされる。
実はアイリーンは佐々木三千代の捜査も受け持っており、彼女の正体について知りたがっていた。実は大正から昭和初期のアメリカ諜報員の名簿の中に佐々木三千代の名前があるからである。
基本ルートでは三千代が多守達を作った方法はクローンと遺伝子操作であることをユーザーに想像させるようになっているが、それでは【おまけ】の部分の説明が付かない(成長しないと言う部分は、遺伝子操作で可能とする)。
アイリーン・ルートでは黒魔術が日本へ入ってきた簡単な経緯(幕末~明治維新と、太平洋戦争中、ドイツから)と、さらにとある魔女の昔話がつづられる。遠い昔、愛する人を亡くした女が、愛する人を永遠にこの世にとどめるためにミイラを作った。しかし、自分もいつかは死を迎えてしまうので、悪魔と契約し、魔女となり永遠の命を手に入れてミイラとともにくらしたが、やがてそのミイラを復活させようと思い始める。
そして、ホムンクルスを作っては恋をし、ホムンクルスが死ぬとまた作り直して恋をして、これを何百年も続けているという。
歳を取らない三千代と多守、アイリーンはこの二人の獲得を命じられていると語り、多守にともに来るように命じるのだった。

佐々木 三千代視点

三千代視点は、彼女が結局何者であるかを説明するために用意される、おまけ的シナリオで、非常に短いシナリオとなっている。これは基本ルートとアイリーン・ルートどちらもクリアしていないとプレイできないものとする。
舞台は上海租界、陸軍橘少将の館。そこでメイドとして働いていた佐々木三千代は、実はアメリカの諜報員だった。だが次第に三千代は橘少将に魅かれて行き、愛人関係となってしまう。
諜報員として、また一人の女として心揺れ動く三千代だが、最終的には諜報員としての道を選び、橘少将暗殺に関わる。あと一歩という所で、橘少将に悟られ、館に火をつけられてしまう。機密書類は燃え、三千代は諜報員としてこれ以上任務を継続することを諦め、橘少将とともに燃える館で死のうと決意するが、橘少将は二人の子供たち(多守、ひなた)を三千代に託す。
決死の覚悟で二人を連れ出すが、二人とも大やけどを負い、病院に運び込んだときには既に息を引き取っていた。
愛する人の意志を継ごうと決意した三千代は、禁忌を破り、ホムンクルスの制作に取りかかる。このとき、彼女は【この禁忌に振れるのは何年ぶりか】という言葉を使う。
そして、二人の身体を維持し続けるために行った殺害の数々を吐露していく。


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Last-modified: Wed, 01 Aug 2012 16:50:26 JST (1941d)