ふしぎの国のアリス症候群

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事件自体は少し前のことになるが、知人の家にムカデが出たと言うので退治しに行った。知人(家主)曰く、長さ 15cm 以上。キッチンペーパーで取り抑えようとしたが、失敗し、その後どこに入り込んだか解らないというので、ボクが呼ばれたのである。今日日、東京の 23 区でムカデなんて出るのかね、と心の中で思ったのは秘密である。
結局、その時の捜索では見つけられず、しようがないのでムカデに効く成分が入っている燻煙タイプの殺虫剤(いわゆるバルサン、アースレッド)を設置し、家主は家主の友人の家に泊まってもらうということでやり過ごした。
結果的には翌日、数 cm のヤスデの死骸が出てきただけであった。

家主はそのヤスデを発見したときは寝起きで有り、かなり寝ぼけていた。さらに、虫が「大」がつくほど苦手である。
だから、家主が勝手にそのヤスデを 15cm 超と思い込んで、また視覚も勝手に脳が補完したのだろう。

そこでふと思い出したことがあった。
そういえば、ボクが子どもの頃は、周囲の景色が突然巨大になり、自分が小人になってしまったかのような錯覚(?)によく陥っていた。父や母も巨大で、周囲の家具、ドア、電灯なんかも巨大なのだが、じゃぁ部屋が広いのかというと、なんか凄くこっちに倒れてくるようなパースになっていて、圧迫感があるのだ。
そんな錯覚なのか夢なのかよく解らないが、とにかくそういう情景を子どもの頃よくみていた。
この現象には前触れってのがあって、頭がぐらーっと回るような不思議な感覚が襲い、そして頭が落ち込んでいくような感覚が来ると同時に、周囲の時間の流れがゆっくりになっていく。そう、周囲が凄くスローモーションになるのだ。なので、周囲の声も凄くゆっくりになるのを憶えている。

大人になって、いや、高校生ぐらいから、とんとその現象は見られなくなった。
今思うと、こうして様々な洞察ができるようになった今こそ、この現象にであってみたいと思ったのだが、どうやらこれは子どもの時しか体験出来ないらしい。というのも、どうやらそれと思い当たるものを探し当てたからだ。

おそらくこの Wikipedia の説明を見る限り、ボクが体験したことと一致している。そして原因は「エプスタイン・バール (EB) ウイルス」によるものらしい。俗に言うヘルペスである。つまり子どもの頃(おそらく乳児?)、このウィルスにボクは罹患したっぽい。もっとも日本人はこのウィルスを保有している人は多いらしいのだが。日和見感染があるらしいので、それがちとイヤだなと思いつつも、あの何とも言えない不思議な感覚を数十年ぶりに思い出した事件であった。