luv wave から 10 年ぶりのたまきんテキスト・オンリー作品。
まだまだ作りたい要素がてんこもりなので、ここではゲームの内容のネタには触れられないが、開発の話やデータの話などをまとめてみた。

更新履歴

  • 2010.06.20 ちょっとだけ加筆
  • 2010.06.13 とりあえずページ作成(ぉ

関連ページ

目次

企画の発端

「翼をください」の原題は「Angelic Being」という名前で、これは Human Being から来ており、単純に「天使」という意味であった。Angelic Being という名前は初回特典のサントラ CD のアルバム名として残っている。
タイトルが変わった理由は、単純にボクの気まぐれである。原画家さんなんかは、Angelic Being の方が良かったらしい(汗)。

この作品の企画の発端は、10 年以上前に遡る。
luv wave の次のボクの企画で、その当時のタイトル名は「Child」といい、12 人の封印された天使を蘇らせるという物語で、シナリオ総容量 5MB 以上、イベント 200 シーン以上の大作であった。
このゲームの最大の売りは、一人の天使を蘇らせると、次回からその天使は蘇った状態でゲームが始まるというものであり、さらに主人公はすでにクリアしたルートの記憶を保持しているというものだった。
ボクはこの当時、セガサターンで発売された「」という作品にいたく感動し、自分もこういうマトリクス(時間と空間(場所)がマトリクス上に配置されるような分岐構造)なシナリオの作品を作りたいと思っており、そしてボクの出した一つの結論が、この「前のルートを覚えている主人公」と「前のルートが引き継がれる世界」というものだったのである。つまり「翼をください」とは違い、主人公はどのキャラから蘇らせるか選ぶことができたし、そもそもどのキャラが蘇っている状態かも固定ではなく、12 人分用意するという、途方もないシナリオ構成であった。
ただこれにはちゃんと解決策があり、キャラ間の状態をある程度パターン化することによって、全通りのシナリオを書かなくても全通りあるように見せかけることにより回避しようと考えていた。たとえばあるシーンでは 3 パターンしかなく、あるシーンでは 5 パターンしかないが、通してプレイすると 3 x 5 パターンという具合である。これがはじめから終わりまで続くとものすごいパターン数となるわけである。

結果的にこの企画は他のプロジェクトの手伝いをしている間にうやむやになり、EVE の移植だのなんだので、さらに自分の作品を手がける余裕もなくなり、そしてそのうちに C's ware をやめてしまい、そのまま闇に葬り去られてしまった。

この当時は「汐碕市」という名前はあったが、まだ「浮遊大陸」ではなかった。横浜を元にした海辺の街だったのである。「汐碕」と言う名前が付いているのも、そのためであり、また何となく洋風な街作りなのも横浜がモデルだからである。
当時の名残として、光人と雛子が双子を尾行するときに、路面電車の停留所を調べるシーンがあるが、あそこに出てくる停留所の名前は横浜市青葉区~緑区のものである。

なお、この Child のキャラを拝借したのが「將姫」という麻雀ゲームで、これに出てくるキャラは皆、Child の天使たちである。また將姫の舞台となっている学校名も「天翔学園」と言い、「聖天翔」から「聖」をとったものである。

ラノベとして

この企画が最初に復活したのは、意外にも「ラノベ」としてであった。
本サイトにもある「B 棟時計台秘密探偵社」は、上の Child からほんの一部を切り出して、エピソード化したものである。このときに「神宮司 雛子」や「稲置 涼子」が登場する。
この時点での稲置 涼子は「翼をください」の稲置 涼子よりもずいぶんと格下のイモータルとして登場している。

結局この企画はボクがものすごく多忙になってしまい、そのまま流れてしまった。

ゲームとして再起動

そして次に復活したのがこの「翼をください」である。
復活当時、ボクはとあるブランドのプロジェクト管理をまかされていた。そっちはそっちで管理だけなので、それとは別に自分のプロジェクトを持つこととなった。他のブランドを管理しながらということだったので、ボクのプロジェクトはとても長いスケジュールを与えられ、ボクにとってはとてもいい環境であった。

そこで、一人で 2MB は入力しようという計画を元に、12 人いた天使を 5 人(光人・やすら・瑠璃火・水帆・水翼)まで減らし、さらに瑠璃火と水帆と水翼の三人は分岐によって選ぶことができ、この三人をクリアしたらやすらがクリアできるようにするという構造で落ち着いたのである。

その後の顛末は 2010.3.3 の日記に詳しい。
ちなみにムービーでやすらがネタバレしてしまったのも、もう出す CG がなかったからである(T_T)
発売 2 ヶ月までイベント・シーンは 20 くらいしか上がっておらず、広報展開も何もできなかった状態であった(汗)。ただ上の日記にも書いた通り、結局 2010 年に入った段階で外注などへの支払いが止まり、gdgdになってしまった。そんなプロジェクトではあったが、「翼をください」が世に出たことそのものが、ボクにとっては何よりも嬉しいことなのである。

背景世界

本作についてはまだまだ語り尽くせない要素がてんこもりなので、いろはの時のようなネタ晴らしはできないが(というか、したところで膨大すぎて、各ネタバレのつながりを示すだけでも一苦労である)、本作がどれだけ途方もない作品かは少し書いてみようと思う。

空を見上げるとそこには宇宙が広がっている。宇宙には様々な天体があるが、その中には銀河系よりも遙かに小さいのに銀河系の何百倍ものエネルギーを持っている天体とかがある(クェーサーとか)。イモータルというのはそういった超高エネルギーなものを自在に操ったりすることができるのかなぁ、というのがボクのイモータル感である。
もちろんイモータルにも様々あり、土着の神様的なものからそれこそ全知全能と言われるものまで、いろいろであろう。

ただイモータルの定義にはまだ決められていない部分があるのも事実で、例えば銀河やクエーサーを自由にできるとして、それを人間で例えるなら積み木を動かすように自由に扱うことができたとして、やっぱり扱うと数億年が経っていたりするのかとか、そもそもそれだけの力を持った存在が作り上げる世界とはどんなものであるかなど、研究の余地はまだまだある。
そして一番の問題は、そういう存在が地球に目を着ける理由はなんであろうか、ということである。

本作に登場する「稲置 涼子」と「熾永 豊」は言うなれば、銀河やクエーサーを自由にどうこうできるクラスのイモータルである。彼女たちは太陽の 20 兆倍以上のエネルギーを自由に操り、自身はそれ以上のエネルギーを持っている存在である。つまり彼女たちがクシャミをすれば、地球がふっとぶとかそういうレベルを()うに超え、太陽系どころか銀河の一部がどうかなってしまうような、そんな存在である。
本作に登場する「稲置 涼子」と「熾永 豊」が、この世界で何を見つけ、何に価値を見いだしていて、そして世界をどうしようとしているのか。そしてそれに人間が到達することはできるのか? 到達できたとして、そこには何が待っているのか?

これは例えるなら人類が火をおこす所から始まって、最終的には銀河系を丸ごと油田のように使うようになるまでの途方もない歴史が必要なことを意味するが、そこはフィクションであるし、飽くまでもボクの脳内での話であるからして、どこかに着地点が存在することであろう。

制限

今回、作るに当たってほぼ自由に企画できたわけであるが、一つだけ広報・営業から課せられた制限があった。それは「血を控えるように」ということであった。当時の傾向としてヒロインが死んだり、血がいっぱい出るようなものはタブーだという認識が広報・営業にはあったらしい。
これが実は意外に作品の「深さ」を非常に阻害してしまった。luv wave などがそうであったように、ボクのキャラの魅力は「哲学に基づいた狂気」にある。瑠璃火は単なる被害者であるが、雛子とやすらには狂気が潜んでいる……はずだったのだが、あまりその部分は多く語ることはできず、また残虐シーンなどもほとんどがカットされた。
どうせバカ売れなどしないのであるから、突っ走ってしまった方が絶対に印象に残る作品になったと思うんだけどなぁ……と、今でも思っている所である。

魔について

本作に登場する「魔」は、「魔法」のことで間違いない。ただボクとしてはオタク界隈でメジャーとなっている「魔法」とはまったく異なる表現の魔法を目指したつもりであったため「魔」という表現をしたのである。
実際、魔法とはものすごく地味なものであるし、前準備が大変で、ものすごい時間とそして触媒が必要なのである。が、もちろんそれをいちいち再現していたのでは、物語が成り立たなくなる場合もある。そもそも本作では呪文一つで魔法を完成させているが、実際は触媒を用意し、呪文を唱え、次のステップに進み、また別の触媒を用意し、それに対してまた呪文を唱え、さらに次のステップに進み……という長い長い手段が必要なのである。
なので本作では「魔法」そのものの効果よりも、「魔法」そのものが持つ独特なオカルト的雰囲気を楽しめるように作ってみたのだが、それが伝わっているだろうか?(汗)

ただ、もちろんベースは D&D である。それをこの世界に合うようにアレンジしてある。日記にもある通り作品は D&D 3rd を使っているが、キャラクタ紹介のキャラクター・シートでは項目数を削るために、D&D Classic を用いている。マジック・ミサイルの数や TAC0 などいくつかのところで違いが生じてしまっている。

ラテン語邦訳

雛子や水翼が使っていたラテン語の邦訳。

BGM 元ネタ表

恒例の BGM 元ネタ表。「翼をください」で使われた楽曲は全部で 30 曲、そのうち「翼をください」のために書き下ろされたのは 22 曲。予算を抑えるため、ボクが管理をしていたブランドで発注された曲を 8 曲利用している。Track はサントラ CD のトラック番号、ファイル名というのは実際にゲームに組み込まれた時のファイル名。ゲーム本体のおまけの Jukebox では「翼をください」のために書き下ろされた曲のウチ、ショートなもの以外が収録されている。

ちなみに発注先は「いろは」と同じ人。ただその人は曲も書くけどプロデュース業務もしていて、その人から先に色んな人が作っている。

Track曲名Jukueboxファイル名参考曲出典
01Polovetsian DancesBGM01Polovetsian Dances From 'prince Igor' / Borodin
02Innocent WorldBGM02Primary Music / Going Under Ground
03Lost SkyBGM03note / eksperimentoj
04interval i×BGMS01
05Not Everything Is LogicalBGM04Inner City Life / LITTLE CREATURES
06Ante MeridiemBGM058 Am / Summer Obsession
07Strange DaysBGM06Take Me Back Your House / Basement Jaxx
08interval ii×BGMS02
09So-SoBGM07Unfulfilled desire / acacia
10J.S.Bach : PreludeBGM08チェロ組曲第一番 ト長調 Prelude / J.S. Bach
11The TruthBGM10Tomorrow Never Comes / Reel People
12interval iii×BGMS03
13interval iv×BGMS04
14Calm UneasinessBGM11Andromeda / Jazztronik
15Perfect LoveBGM12Thanksong / Dave Grusin
16DeterminationBGM13Lights Go Down / Basement Jaxx
17interval v×BGMS05
18RecollectionBGM14Everytime You Need Me / Fragma
19AngelBGM15Tenshi / Gouryella
20interval vi×BGMS06
21Change The WorldBGM16You nothing / acacia
22phantasia ballad - Techno mixBGM17或る街の群青 / ASIAN KUNG-FU GENERATION
23phantasia ballad - Full Version×BGM17_04
24phantasia ballad - minus one version×-
25phantasia ballad - Short VersionBGM17_02

おまけ

いろはとの関係


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