この業界にいると、もちろんお金の計算もしなくちゃいけないのだけれど、新しい外注さんなんかとやりとりするときにどれくらいの報酬でやるのかというのがいつも問題になってくる。
相手が別の業界から来た人や初めての人だと、相手も相場が解らないので、なかなか決めるのに時間がかかってしまったりするのだ。
またボクが直接関わらなくても、方々から「○○の作業っていくらぐらいが妥当ですかね?」とよく聞かれる。
この状況を鑑みるに、要するに相場というものはおそらくないように思われる。
でもボクが交渉するときはだいたい自分の相場というものがあって、それを元に「これくらいでどうですか?」って話をするので、ボクの相場というのをまとめてみた。

なおここの数値はボクが 10 年間、いろんなプロジェクトを動かしてきて、いろんな外注さんたちと出会って得てきた情報で、必ずしもこの数字が正しいとは言えない。ただ今までやってきて特に文句を言われたことはないので、妥当な数字なのではないかなと自分では思っている。

  • 2008.03.09 とりあえず作成

そもそもどういう内訳があるの?

ゲーム制作にはどういうところにお金がかかるのか?
そこの所から明確にしていこうと思う。
ちなみにボクは営業・広報をしたことがないので、残念ながら広告費などはここで示すことはできない。このページで示されるのはあくまでも【ゲームそのものを作るお金】である。実際にはこれ以外に、広報営業費と製造費がかかってくる。
広報営業費は実際に店を歩いて、ビラを配ったり商品説明をしたり、雑誌に広告を載せたり、雑誌の記事を提供したり、ウェブサイトを作ったりなどなどの諸経費である。
製造費とは箱やメディア(DVD や CD-R)のプレス代、プロテクト代、マニュアルやアンケートはがきの制作などである。

エロゲーの素材を分解すると……

エロゲーの素材を分解するとだいたい以下のようになる。

項目種類説明
イベント画画像そのシーンを表現する、画面いっぱいに表示される映像
バストショット(立ち絵)画像現在の背景(場所)にいるキャラクタを表す画像
バストショット背景画像現在の場所を表す背景画像
シナリオテキスト物語とゲームの進行を担う文章
プログラムプログラム全ての素材をコンピュータ上で表現するためのプログラム
スクリプトテキスト全ての素材をシナリオに沿ってどのように表現するかを指示する文章
BGMその名の通り、BGM。
主題歌や挿入歌、エンディング歌、イメージ・ソングなど
効果音その名の通り効果音だが、ワンショットとループの二種類ある
音声登場人物の声
ムービー or アニメ画像(動画)そのシーンを表現するアニメーションやデモ・ムービー
カットイン画像アイテムやちょっとした小物など、大きく取り扱うまでもない画像
インターフェース画像ユーザの入力を受け付けるためのメッセージ・ウィンドウや各種ボタンなどの画像

画面的には以下のような感じになる。もっとも、上の素材全てを表現することはできないが(汗)。

gameview.gifevent.gif

制作スタッフにはどういう人が必要なの?

次は上記のデータ、誰がどう分担しているのかを表にしてみた。

役職関連するデータ説明
ディレクタ-データの制作には関わらないが、いわゆる映画の監督。
ただしエロゲ業界では以下のいずれかの役職の人が兼ねることが多い
原画家イベント画,バストショット元の絵を描く人。塗り絵の原画を描く
シナリオ・ライターシナリオ物語を書く人。スクリプタを兼ねることが多い
プログラマプログラムプログラムを書く人。スクリプタを兼ねることが多い
スクリプタスクリプトプログラムの仕様にあわせてスクリプトを組む人。演出もやる
CG 監修全ての画像全ての画像の統一、仕上げ、クオリティ・アップなどをする
CG 彩色全ての画像原画に色をつけたり、ボタンなどを作ったりする
背景屋バストショット背景,イベント画バストショット背景を描く人。場合によってはイベント画の背景もやることもある
作曲家BGM,歌音楽を作る人
音屋効果音SE を作る人。作曲家が兼ねることが多い
声優音声その名の通り、声優さん
音響ディレクタ音声各声優さんのしゃべりを調節したり、イントネーションの説明などをしたりする人
アニメータムービー or アニメアニメ部分を作る人たち。撮影なども全部含む
演出家ムービー or アニメデモ・ムービーやアニメ・シーンの絵コンテを切る人

値段の決め方は二通りある

さて、外注さんに上の作業をやってもらうにあたって、値段の種類は二つある。
それはどの業界でもおなじみの【単価計算】と【グロス計算】である。
単価は実際に発注時に個数を決めて、一ついくらでやってもらう。
グロスはお願いする数を出して、それを総計してやってもらう。
業界的にはグロスの方が安く付くと信じられている。
というのも、枚数が途中で増えたりしても基本的には値段は変わらないからだ。プロジェクト進行上、急に素材が追加されたりすることがある。グロス計算だと基本的にプロジェクト単位で受けてもらうので、少々増えても金額が増えることはない。
ただ契約によってはもちろん増えたら、一つあたりいくらと規定する場合もあるが、その辺を有耶無耶にする経営者は多い。

したがってグロス計算だとプロジェクト途中で素材が増えた増えないなどの関連でトラブルが起きることがよくある。だからボクはいつも高く付いても単価計算でお願いしている。

ではお値段!

項目単価(円)備考
イベント原画8,000 ~ 15,000、50,0000 ~ 80,0000左は通常の値段。右は売れっ子を使った場合
イベント CG10,000 ~ 30,000イベント内の背景を彩色するかどうかで変わってくる。
また塗りも、アニメ塗りかぼかし塗りか、影指定があるかないかで変わる
バストショット CGイベント画CG の 1/2 ~ 1/3塗りの方向性をイベント画に会わせるので、イベント画の値段に左右される
バストショット背景15,000 ~ 50,000TV アニメ級~劇場級まで様々
シナリオ1000 円 /1kbまさしく1 バイト 1 円。ただしあらすじや設定などはお金を出してくれない
プログラム150,000 ~ 2,500,000アドベンチャーならこんな感じ。アクションや麻雀などはもっと高くなる
スクリプト150,000 ~ 300,000/1MBシナリオ 1MB あたり 15 ~ 30 万円
BGM10,000 ~ 50,000最近は \25,000 以下が圧倒的に多い
100,000 ~ 1,000,000実はピンキリ。有名人を使うといくらでも金をかけられてしまう
効果音1,000 ~ 5,000一度作るとその音は他の作品にも使われてしまうので、けっこうつらい
ムービー100,000 ~ 10,000,000こちらもピンキリ。これは凝るほどお金が飛んでいく。
アニメを起こしたりして、背景とかが動き回るととんでもない値段に
アニメーション1,000,000 ~ちなみに 30 分の TV アニメは 800 万~1500 万
カットイン-これは通常社内で作成することが多い。もし外に出すなら、1 個数千円程度
音声-こちらは誰を使うかによってそれこそ値段が全然違うので数値化は難しい
インターフェース100,000 ~ 200,000こちらも社内でやることが多いが、外に出すとこれくらい

これとは他に、以下のような金額を計上することがある。

  • ディレクション費
  • CG 管理費

ロイヤリティはないの?

原画家、シナリオ・ライターに限ってはロイヤリティが発生することがある。
だいたい 0.5% ~ 3%。
また、何千本以上からという条件が付くことが多い。

なお声優さんはそれとは別に、売れた本数ではなく二次使用などに支払う必要が出て切る。たとえばコンシューマへの移植や、1 と 2 をセットで作り直す、リメイクなどなどそのたびに最初の録りにかかったお金をベースに何%という感じで発生する。

何本売れると儲かるの?


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