はじめに

エロゲーの値段教えます?は各作業に対するコストについて説明したものである。
ここでは「じゃぁ結局1本あたりいくらかかるのよ?」というのをあくまでもたまきんの体験談を元に紹介する。ただしこのページは各プロジェクトの値段を暴露するページではない。従って「○○のタイトルはいくら」という情報は一切載っていない。
あくまでもいくらぐらいで作られているかを記したものである。

また、業界内での専門用語をいくつか使っているので、まずは関連ページのエロゲーの値段教えます?を読んでからこのページを読んでくれると有難い。

更新履歴

  • 2008.03.24 とりあえず書き始める。

関連ページ

目次

簡単なゲーム制作期間の話

ゲームを制作した時に使ったお金を回収できるのは、発売日後である。したがってその間、ゲームというのは全く金にならないし、基本的に制作費がどんどん出て行くばかりである。というわけで回収時期というのはプロジェクトが始まってからかなり先と言うことになる。
では「かなり先」というのはどれくらい先なのか?
通常で半年、凝ったものになると 1 年以上かかる。その間、基本的にそのプロジェクトでお金が入って来ることはない*1
会社がプロジェクトを立ち上げるときには、「いつごろ」「いくら入ってくるか」というのを「ゲームの制作期間」を元に計算することになる。逆に言えば、「いつ」に「いくら欲しい」からという理由で「制作期間」を設定することもある。

よほど切羽詰まった状況でなければ、フルサイズのエロゲの開発期間は半年である。
フルサイズとは何か? これは攻略できるキャラクタが 3 人以上おり、イベント画が 80 カット以上あるゲームのことで、シナリオは 1MB 以上、できれば 2MB の作品をフルサイズと呼んでいる。またこの規模になってはじめて 8,800 円という値段で売ることができる(これをフルプライスという)。これよりも規模が小さいと、8,800 円で売るのは難しいとされている(お客さんが買ってくれない)。
ただしこの基準が業界全体に浸透しているかどうかは、ボクは解らない。
あくまでもボクが今まで見てきた判断基準である。

ちなみにこれは時代と共に変わっており、10 年前はイベント画 100 カット以上をフルサイズ(当時は中規模)と呼んでいた。

しかし会社の状況によっては半年待てない場合がある。
その場合、外注などをフル動員して 3 ヶ月、2 ヶ月でフルサイズの作品を作ったりする。

そんなわけで、がんばって 3 ヶ月、普通に作って半年、凝りに凝りまくって 1 年とだいたい判断すれば良いのではないかと思う。

社員と外注どっちが安いの?

さて、プロジェクトを始めるにあたり、誰が何を作るのかというのも会社が考えなければならないファクターである。
社内のリソースを使うか、外注を使うかはプロジェクトの内容や会社の状況によって大きく左右される。
たとえばすでに社内のリソースは別のプロジェクトに食われているとか、使いたい原画さんがいて、その人の作品を作りたいとか、そんな思惑で社内か外注かが決まっていく。
外注を使うメリットはなんと言っても「出来高制」で仕事が頼めること。
期間が延びようがなんだろうが、基本的に数量で値段が決まるので、最初に交渉したときよりも値段が変わることはまずない。ところが社員となると、基本的には毎月給料を払うのでプロジェクトが遅れたりすると、伸びた分だけ毎月のコストがかさんでいくことになる*2
だが社員は社員のメリットがあって、いわゆる雑用のようなものを頼むことができる。たとえばウェブサイトの CG やちょっとした 4 コマ漫画、広報用のいろいろな文章や挿絵などなど、細かい仕事である。
というかぶっちゃけると、外注だけでゲームを作るのは正直難しい。雑用をやってくれる人がいないと、外注だけだと全体の統一もとれないし、外注が挙げてきたもので細かいミスや修正も出てくるし、その他にもウェブサイトやマニュアル、チラシなどで必要な細かな素材などをいちいち外注に出していたら、外注費だけでなく管理も大変なことになってしまう。
だからコアメンバーとして「ゲーム全体が見られる人」「文章が作れる人(シナリオとまでは行かなくてもキャッチコピーや広報用のプレス情報なんかが作れる人)」そして「CG のできる人」の 3 人がいないとかなりつらいとボクは思う。

外注を使うデメリットはさらにもう二つある。
一つは「○○先生の作品が読めるのはジャンプだけ」っていうブランドのオリジナル性である。原画家さんかシナリオさん(もしくは企画屋さん)、せめてどちらかが社内で固定して存在していればそのブランドの個性化が図れるのだが、これらが外注だとその外注は他からも仕事を受けることがあるわけで、突出した特徴を作るのは難しい*3
二つ目は一つ目と根本の原因は同じなのだが、社内にノウハウがたまらないことだ。
原画にしてもシナリオにしても CG にしてもプログラムにしても……とにかく外注に出した部分はノウハウとして会社の力にならない。したがって外注ばかりに頼っていると、なかなか会社として成長しなかったり、その外注とのコネを持っている人が会社を辞めたりすると大打撃を受けてしまう。

一本あたりにかけるべきお金

結論を書いてしまうと、ビッグネームでない限り、1 本あたりにかけられるお金というのは 800 万円~ 1500 万円である。
これは広報費や製造費を含まない、単純な開発費の値段である。
内訳を見てみよう。なお実際の仕事内容の分け方は、エロゲーの値段教えます?を参照して欲しい。

項目単価数量合計(円)
イベント原画12,00080 カット960,000
イベント CG 彩色20,00080 カット1,600,000
バストショット原画5,00080 カット400,000
バストショット CG 彩色10,00080 カット800,000
バストショット背景15,00030 箇所450,000
シナリオ10002MB2,000,000
BGM15,00015 曲225,000
150,0002 曲300,000
SE2,00050 個100,000
音声-10,000 ワード2,500,000
デモ・ムービー200,0001 点200,000
合計9,535,000

とまぁ、なんとか 1000 万円以内に納めてみた。この予算だと売れる本数は 5000 本を目指して広報展開する感じになる。当然、アニメ・シーンなどはない(笑)。歌もまぁ普通。ぎりぎり声優さんに歌ってもらえる額。
原画家さんは売れっ子・ベテランまでは行かないまでも、壁になりたてとかそれくらいのクラスの人。
CG さんはこれ以外に統一などをとれる人が社内にいると仮定する。
そう、これ以外に社内にいる人のことを計算しなければならない。
この場合、ディレクタ・プログラマ・CG 監修が社内にいるとする。また、彼らの仕事内容は以下の通り。

ディレクション・プログラム・CG 監修・スクリプト・インターフェース・カットイン・デバッグ

会社がこの人達に毎月 20 万円払っている場合、このプロジェクトが 6 ヶ月なら、以下の通り。

( 3 x 20 ) x 6 = 360 万円

これ以外にも社屋の家賃とか開発機材代とか光熱費とかあるんだけど、これらは他のプロジェクトや他のメンバー達も使うのでとりあえずは省くことにする。
ちなみに侮れないのが消費税。

9,535,000 * 0.05 = 476,750

消費税入れると 10,011,750 円となり、1 千万円を突破してしまうのですなぁ。

単位の話

上記の表で「カット」と「箇所」いうのがあるのだけど、その説明をしておこうと思う。
まずカット。これは単純に「枚」ではない。エロゲーの値段教えます?の差分の所を見てもらえると解ると思うのだが、1 枚の原画から幾つもの差分が作られることがある。表情が変わったり手が動いたりする。枚数で換算するとそれらまでカウントされてしまうので、それらもひっくるめて「カット」と表すのである。

次に「箇所」なのだが、バストショット背景には時間帯と天気というものがある。同じ場所でも「昼」「夕方」「夜」「深夜」とそれぞれの「曇り」「雨」「雪」「嵐」が必要な場合がある。また作品によってはゲーム内で季節が変わる場合背景の桜が咲いている・咲いていないバージョンとか、紅葉しているとか葉っぱが散っているとか、季節が異なる場合がある。
これらは背景屋さんに一つ作ってもらったら、 CG さんがその上から修正して作る。
なのでこちらも枚数表示ではなく「箇所」で表してある。

どちらも「一つの絵から最終的に幾つもの CG が出来上がる」ので、独自の単位をつけているのである。

予定外コストの発生

結論


*1 センチ商法と言われる、いわゆる前評判でグッズやデジタル・コンテンツを販売し、小金を稼ぐ手段もないこともない。
*2 アニメ業界と違い、ゲーム会社は社員にも出来高制をとっている所はほとんどない。
*3 ちなみに今後は CG さんもそれくらい重いウェイトを占めていくことになると予測される。原画を殺すも生かすも CG であることにユーザーさんは気づき始めている。

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