Top > Diary > 2010-07-08

絵描きとシナリオ・ライターの違い

ふむふむ!

昨日の日記つながりで、絵描きとシナリオ・ライターの物事のとらえ方と言うんだろうか、うまく言えないんだけど、ゲームを作る上でよく感じる違いをボクなりにまとめてみた。まずぶっちゃけて言うと、絵描きは「刹那型」でシナリオ・ライターは「連鎖型」である。別にすべてのライターが「連鎖型」でもないし、すべての絵描きが「刹那型」でもないが、ボクが色んな絵描きさんやシナリオ・ライターさんと話をしてきた限り、この二つにそれぞれ集約することができる。

まず始めに、このどちらにも当てはまらない人というのはいると思う。なぜ「思う」と書いているのかというと、そういう人に直接出会ったことはないからだ。ただ、手塚治虫とか宮崎駿なんていう、絵もシナリオも両方できる人というのは、たぶん思考法が刹那型でも連鎖型でもないと思う。そしてこう言う人がどうやってシナリオを作っているのかは、一度話をしてみたいなぁって思っているんだけど、映像も話もできる人ってなかなかいないのよね。

で、まずシナリオ・ライターの「連鎖型」って何かというと、物事には始まりがあってそして終わりがあって、その終わりに向かって様々な展開をしていくという思考法。なんだよ、なに当たり前なこと言っているんだよ、って言われるとそれまでなんだけど、例えばシナリオを考えつく発端ってのはすごく一部だったりしてもいいわけ。例えば「片腕がない女戦士の話」とか「魔法使いが太陽を隠す話」とか「メイドと学校に行く話」とか、まーなんでもいいんだけど、発端はちょっとしたアイデアだったりするわけ。これには連鎖性とか前後の相関関係とかまったく関係ない。
けれどこのアイデアを実際にシナリオとして実現するためには、出だしや人物の相関関係、起こる出来事などを時系列に整理する必要があり、さらにあることが起きたから、これが起きてといったような連鎖を考えざるを得なくなる。そのため、絵描きさんに発注する絵というのも自ずと【必要な絵】という観点から発注され、それは非常に【説明臭く、画面になるべく多くの情報を入れようとする】という傾向に偏りがちなのである。

これはどのような絵になるかというと、キャラが小さくて周囲の情報をたくさん入れようとするような絵になる。
これを回避するもっとも簡単な手段は、「絵を多くする」ことである。シナリオ・ライターが感じる【必要な絵】以上に絵の枚数が多ければ、どうでもいいシーンや、ストーリー上では特に重要じゃなくてもキャラの魅力を伝えるためだけの絵なんかを用意したりすることができるからだ。
ただ、この方法はあまりお勧めしない。これではシナリオ・ライターは進歩しないからである。

さて、絵描きの刹那型というのはどう言うものかというと、絵描きはキャラクタの絵的な栄える部分を熟知しており、それにアイデアが結びつく。「この女の子がこう言うポーズしたら、スゲーカワイイ」とか、「下乳、命」とか、絵描きのフェチズムにも関係してくるんだけど、魅力的な絵を優先して絵作りをする。そしてそれは絵としてはとても魅力的で、また広報・営業さんなんかもすごく賛同する絵になる。
ただそこには前後の関連性はなく、服装や動作、持っているモノに至るまでがその場の思いつきであることが多い。例えば「この女の子にメイド服着せたらいいと思うんだけど」と、思いつきで絵を上げてきたとする。するとシナリオ・ライターはそのキャラがメイド服を着る理由を考えなければならないし、メイド服を着るシーンを考えなければならなくなる。
ただ往々にして、これが良い方向に転がることもあるので、シナリオ・ライターは無下に断るべきではない。そこで絵描きがそのキャラクタに対して持っている魅力的な要素を理解するべきである。もちろんそれでストーリーが破綻するようなことがある場合は、それをちゃんと絵描きに説明すれば良い。

また、絵描きさんの中には【空間恐怖症】というものを持っている人がいる。これは何かというと【画面全体が女の子で埋まっていなくちゃいけない】という強迫観念に取り憑かれている状態だ。つまり女の子で埋め尽くし、なるべく空間(余白)を空けたくないわけである。これはこれで実はすごく素晴らしいもので、この空間恐怖症があるからこそ、画面いっぱいにキャラが描かれ、キャラの魅力がひしひしとユーザに伝わってくるのである。
がしかし、これにとらわれ過ぎると状況を説明する必要のある絵や、また戦闘シーンなどの激しい動きを伴う絵を描くときに、キャラクタばかりに固執しすぎ、状況がよくわからない絵になってしまうこともある。なので、ここは逆にシナリオ・ライターの【状況を説明する絵になりがち】な要素を取り入れる必要があるのである。
ちなみにこの空間恐怖症というのは、売れっ子な絵描きさんほどその傾向が強いというイメージがボクにはある。つまりそれだけ空間恐怖症というのは、キャラクタの魅力を受け手に伝えているのだろうとボクは推察している。

結局の所シナリオ・ライターにもそして絵描きにも得手不得手があると言うことである。当たり前ではあるのだが、これを充分理解した上で絵作りというモノをしていくのが重要なのである。この辺、まだまだボクも独りよがりなところが多く、恥ずかしい限りである。
特にシナリオ・ライターが発注しがちな引きの絵というのは、絵描きにとってはしんどい場合が多いのだ。何せ背景ががっつり入るし、キャラも全身とは言わないまでも、服装のほとんどを描かなければならないし、さらに背景とキャラの位置関係(パース)や、キャラが触れているモノ(例えば自転車とか、カバンとか、武器とかなんでも)も描き込まなければならない。しかもそれでいて絵描きとしては【魅力的な絵】を目指したいわけで、そこには単純にデッサン力とかだけでなく、レイアウト術や空間把握能力が必要となり、キャラをアップにするよりも何倍もの労力が必要なのである。しかもそれだけ労力をかけた割には、ユーザからは「キャラが小さい」とか「デッサンが変じゃね?」とか怒られるのである。本当に可哀想だ(笑)<笑い事じゃない

と言うわけで、上記の点を理解した上でエロゲをプレイしてみると、また絵作りの妙というのだろうか、1 枚 1 枚に込められた制作者の意図なんかを読み取れるんじゃないだろうかと思うのだけど、どうだろうか?

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たまきんの作品は、引きの絵ばかり(笑)


さて、今日紹介する一枚はアメリカのエレクトリック・バンド、The Crystal Method。曲はテクノって言われちゃうと、ちょっと違う。じゃぁ、デジタル・ロックって言われるとそれも違う。まぁでもテクノ寄りなのかな。リズムが素晴らしく、そしてそこにいつの間にかメロディがすーっと流れ込んでくる不思議な曲作り。ゲーム、アニメ音楽好きなら絶対にのれること間違いなし!

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Last-modified: Tue, 13 Jul 2010 10:53:28 JST (5028d)