エロゲのシナリオ・メモ

今回つくったゲームで色々と感じたりしたことを短くまとめて見た。主にエロゲの内容についてである。
まず始めにボクはもう古参のクリエイターで、今の 10 代 20 代と渡り合えるかというと、そんなことはないなぁと思っている。老害に近いのだろうか? ただアイデアは特に枯渇せず、あんなもの作りたい、こんなもの作りたいと、作ることそのものに困ったことはない。
それはさておき、ボクが育ってきたいわゆる恋愛モノというと当時はまだ「萌え」という言葉も定着していないというか、そもそも「萌え」という言葉が草の根ネット(インターネットではない)で使われ始めた頃で、例えば「うる星やつら」とか「めぞん一刻」とか「きまぐれオレンジ☆ロード」とか、まぁその辺である。
またその辺の作品を通してボクはオタクになったので、そういう意味ではエロゲ業界にいるのもあんまり不思議はない。もっともその頃はそう言うのにもハマっていたが、もっぱら SF やファンタジー小説がメインであった。とはいえスニーカー文庫などには染まっていなかった(スレイヤーズとか)。
また、エロゲはエルフや F&C 系の推理モノや館モノ、伝奇モノで育っている(最終的に行き着いたのが管野さんだった)。なので「萌え」って何? オイシイの? ってなってしまう。

さて、そんな人間がエロゲを作っていて、昨今の萌えというかエロゲに感じていることをまとめてみた。

リスクをとにかく避ける

シティハンター冴羽 獠しかり、うる星やつらの諸星あたるしかり、ボクが育った頃の男主人公というのは、男の方からヒロインにちょっかいを出すのが当たり前だった。だからスカートめくりをはじめ様々な「セクハラ」を仕掛け、ヒロインに返り討ちに遭う(ハンマーや電撃)というのが黄金パターンだった。
ルパン三世もそうである。
が、今のエロゲはそれではダメらしい。あくまでもヒロインから触っていいよってならないとダメ。その理由を尋ねると「拒否されたらイヤだ」とか「返り討ちに遭ったらどうするんだ」っていう答えだった。
主人公はあくまでもヒロインに求められたら手を出す。
そもそもエロゲだし、いずれかのヒロインに行くようになってるんだから、どんどん手を出してやっちまえよってのがボクの感覚なんだけど、そんな主人公は NG なのだ。

二叉がけは NG

基本的にそのヒロインのルートに入ると浮気は NG。エロゲだからと言って、あの女この女、所構わず手を出して H をするのは NG らしい。だけど、同時攻略やハーレム・エンドはあると嬉しいらしい。うーん、すみません、おじさんよくわかんないです。

嫉妬は NG

ヒロインが確定すると他のヒロインたちは自動的に、主人公とくっついたヒロインを祝福するモードになる。今まであんなにみんな主人公好き好きオーラを出していたのに……!
なので、他のヒロインが嫉妬したり、それめいたセリフを言うのは NG。やってもギャグに留めるところまで。
それよりもひたすら確定したヒロインとイチャラブすべし。
うーむ、物語の幅が広げにくいなぁ……。 ちなみに嫉妬がある程度許されているのがヤンデレなのだが、今ではあまり好まれていないようだ。マジか! luv wave とかヤンデレの話なのにな!(ぁ。あの当時そんな言葉はなかったけど。

馴れ初めは不要

とにかくヒロインとイチャラブして、ひたすら恋愛を楽しみたい。なのでなんでそのヒロインが主人公のことを好きなのかとか、恋人になるまでの馴れ初めなんて不要。むしろ最初から主人公とくっついていて、ひたすら恋愛したいとのこと。馴れ初めそのものがあってもいいが、それは回想シーンとか別エピソードとかで入れておいてくれれば OK らしい。もちろん、恋のライバルの男キャラとかもってのほか。
その代わり、キャラは解りやすくしておく必要がある。馴れ初めがない=主人公も含め各キャラのバックボーンがゲーム中にあまり語られないので、複雑な家庭環境・設定・好きになる動機などは嫌われる。記号化された期待通りのキャラ(ツンデレとか、無口とか、電波とか)の動きをしてもらわないと、感情移入しづらくなる。

暴力は NG

ボクはお笑い番組が好きでけっこう見るんだけど、漫才のつっこみ役ってわりとボンボンとボケ役を叩くじゃない? そんな感じでボクもつい会話のリズムの中にヒロインが主人公を殴ったりするシーンを書いてしまうんだけど、これが NG。
そんな暴力的なヒロインはいらないとのこと。 いや、暴力って言うか、うーん、仲いいと叩いたりしない? もちろん軽くって言うか、なんていうか、ノリだけど。
最近の若いカップルはそんなことないのかなぁ?? そもそも最近の若い人は殴られて育ってないから、殴るのとかに逆に免疫がないというか、何とも思わないから平気なんじゃないかなーとか勝手に思っていたのだが……<偏見

以上がここ 5 年くらい、ボクが感じているエロゲの注意点というか、ボク自身の持ち味と決定的に異なるところである。もちろん上に書いてあることが正しいとも限らない。ただここ数年は上のことに気をつけて作品を作っている。ちなみに翼をくださいは上のことはほとんど守られていない。
もっとも自分には自分のスタンスや味があるし、シナリオの仕組みやキャラ、ネタの仕込みなんかは全然困ってないんだけど、うーん、上のようなことを言われてしまうとやっぱりロートルなのかなとも思いつつ……とはいえボクが考えるようなゲームは世の中になかなかないので、とにかくどこかで作品を出し続けないとなぁと思ってもいる。

3 thoughts on “エロゲのシナリオ・メモ”

  1. 一人の意見ですが、私は「ヒロイン、及びヒロインとの恋愛(&その先)の崇高化」×「見返りの見えない負担の忌避」なんじゃないかな、と思っています。リスクと嫉妬がNGなのは前者で直接説明できます。暴力NGというのも、崇高なヒロインが簡単に手を出す人物であることを嫌うのでは、と。春季限定ポコ・ア・ポコの多々良先輩みたいに、非攻略キャラだとあんまり問題にならない印象もあり、これを裏付けていいます。二股がNGで同時攻略はOKというのも、同様に「ヒロインとの恋愛」の格が下がるかどうかが分かれ目だと思います。うまい同時攻略ストーリーって、その辺すごく配慮して書いてると感じますし。

    一方、馴れ初め不要は後者に入ってくると思います。というのも、今のこの手のゲームって、そもそも話の初期条件を説明し切るまでが長いと思うんですよ。「学園に編入」なんてやると特にw でもその手の設定の説明は省けないから、すると馴れ初めが犠牲になるという。逆に「読んでいって得るものがありそう」と想像できるような負担は、みんなあんまり気にしていないような気がします。雛子との馴れ初めとか。

    そして嫉妬や暴力といったNGも、同様なことが言えると思います。ヤンデレなら嫉妬が許容されるように。逆にそれらを踏んだはいいが負担だけで終わると嫌われる感じが。

    1. なるほど、なるほど。
      その二つの理由も分かりますが、実際はもうちょっと下世話というか、俗っぽい理由が下地にあるのではないかなぁと思ったりもしています。

      1.  確かにもっと源流を辿ると俗っぽい部分に辿り着くとは思います。しかしそこまで立ち戻ると、受け手の感覚の個人差なども強く表れますし、「作品をどのようにすべきか」を考えるという限定された範囲においては、かける労の割に得るものは多くなく、まずはなるべく全体をとりまとめて考えるほうが効率がいいように思います。

         私が大きく先の2点に分類したのは、「ヒロイン及び恋愛の崇高性」が何を引き換えにしても侵されてはいけないものなのに対し、他は代わりに得るものがあればそうではないという点で同一視できないと感じたからです。尤も最近ではユーザーの寛容さが失われたのと、ほぼ発売日の週末だけの勝負になり良質な作品が口コミで売れるといったことが減ったこと、それに絡んで最初から分かりやすい魅力がないと予約数が減ることから、なかなか思い切って勝負に出ても不利にしかならない状況になってきているとは感じます。

        ただ、アダルト分野において、作品性の対価として受け手に負担をかけても許されるというのはエロゲくらいのもので、それがエロゲを大きく成長させたことを考えると、寂しい限りですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です