風、逝く

ウチには姉妹猫がいるのだが、その片方が亡くなった。
突然といえば突然だったのか、いやそうでもないのか……実はわりとボクの中では心残りな亡くなり方だった。

ちなみに姉妹猫は白い方を「花」、黒い方を「風」という。

時系列順に整理すると、一月の終わり頃、花の乳がんが判明した。こちらの猫についてはまた彼女が亡くなったときに詳しく記事にするが、とにかくこの猫のために毎日包帯を変える必要や、餌の種類が異なるために餌をやるときは二匹別々に隔離するなどの対応に追われた。

そんなある日、風がトイレに行こうとするとまっすぐ歩かず、ぐるぐると回るのに遭遇した。いわゆる目が回ったような状態だ。
なんだこれ? と思ったのだが、飼い主と相談した結果、三半規管が狂ってるだけなので様子を見てずっと続くようであれば病院に連れて行くということになった。
その後、ぐるぐる回ることはなくなったのだが、とにかく元気がなかった。
それでも毎日食事とるにつれて回復してきて、あぁなんか良くなりそう、とにかく今は花の乳がんの手当をせねば……花が落ち着いたら風も病院に連れて行こうと思っていたら、今日の夜、花の隣で息絶えていた。

というわけで個人的にはなんとも言えない「後悔」が残ってしまったというわけだ。
年は恐らく 18 歳。ボク的には 21 歳くらいまでは生きるかなーなんて思っていたんだが……。

最後の一ヶ月、風はひたすらホットカーペットの上で過ごしていた。
身体を温めることが、体調を癒やす方法だと本能的に知っているのだろう。風邪などで発熱するのと同じ効果だ。
だからボクも昼間は切っていたホットカーペットをずっとつけっぱなしにしていた。
ただ残念ながらウィルスや菌に冒されたわけではないので、この暖めるという行為がどこまで意味があったのかは解らない(逆効果だった可能性もある)。

なので風が亡くなってから三日ほど、自責の念が続いてしまったw
いや三日だけかよと思われるかもしれないが(汗)。
一方、花の方は三日では済まなかったようで、毎日、いろんな部屋に行ってはにゃーにゃーと唏いていた。
これの意味するところはもちろん花にしか解らないのだが、ボクには風を探しているように見えた。今までそんな行動をしたことはなかったからだ。
これは一ヶ月くらい続き、風が亡くなったことがストレスになって、花の寿命も短くなるのではないかと心配した。

残念だったのが風の持っているなんていうんだろうね、場の空気を読む能力?
この猫はとにかく空気を読む(ように見える)。ボクの機嫌も読む。今はかまってもらうべきではないなと判断すると、さっさと自室に帰る。さらにボクが出かける準備をしていると、それも察してさっさと自室に帰る。
キーボードは絶対に踏まない。
「お帰り」という言葉を解す。
などなど。
同じ哺乳類同士、理解し合える部分ってあるんだなと思ったのと、この空気を読む能力が死によってなくなってしまうのがなんとも切なかった。
でもそれは人間も同じで、その人にしかできなくて且つ他人に継承することもできない事ってあって、それは現段階ではその人が亡くなってしまったら失われてしまう。

そんな空気を読む風と対照的なのが花だ。花はこっちの事情など意に介さずなんでも要求する。

でも見ていて思ったのが、花の方が得だなってこと。花のことを「図々しい」とか「なんだコイツ」とか色々思うけど、結局要求通りにしてしまう。風のように場の空気を読んで遠慮していると、こちらも「あぁ、風は別にいいのか」なんて判断してしまうのだ。それはたぶん人間の世界でも同じだろう。図々しい人の方が得をする。とくに人に憎まれることなく図々しくなれる人(人たらし)がいるけど、コミュ障・陰キャの自分からすると、すごいなぁと思う。

まぁそんなわけで、風にしてあげられたことが少なかったなと感じるし、風自身が不公平感を感じていなかっただろうかと自責の念が湧いてしまうのだ。
しかしその心のウチを知る方法は、すでにない。

最期、花ばかり手当てしていたボクを見て、風は何を思っただろうか?