彩色という役割

6/28 にボクが管理しているブランドの第一弾となる「サンタフル☆サマー」というのが発売された。ボクは作品のできについてはけっこう満足していて、気に入っている。ただしボクは中身には携わっていない。飽くまでもディレクタをちょっと補佐したくらい。この作品はディレクタやシナリオ・ライターの力によって出来あがった作品である。
2ch での評判もなかなかよく、ホッと胸をなで下ろしているところである。
ただ、エロゲ批評空間だと評価がそんなに高くないのよね……どうしてこんなに開きがあるんだろうか(汗)。

さて、この「サンタフル☆サマー」という作品、ひたすら彩色さんを巡る戦いだった。いや、その戦いをしていたのはボクだけだったのだろうが、とにかく彩色するひとに困ったのだ。彩色とはなにをする人かというと原画家が描いた絵に色を塗る人のことである。ただ一言に彩色と言ってもいろいろと役割がある。

  1. 色彩設計
    キャラクタ設定に色をつけて、色設定を作っていく
  2. 仕上げ
    彩色は一人の人間がやるわけではないので、色んな人がやった彩色を一つの作品として統一していく。
  3. 彩色
    1 の彩色設計を元に、原画に色をつけていく。

上の場合、1 と 2 はだいたい同じ人がやることが多い。この 1 と 2 をやる人のことを「CG チーフ」もしくは「CG ディレクタ」と言う。で、サンタフル☆サマーではこの「CG チーフ」の獲得に非常に困難を極めたのである。というのもこの CG チーフ、実は割に合わない仕事なのだ。
色彩設計をし、そして色んな人があげてきたバラバラの CG(いちおう設計図は渡すけれどもどうしても塗る人の個人差は出てしまう)を統一させる。さらに CG の発注などもこの CG チーフが請け負う。それでいて、給料って言うのは普通の彩色だけする人とそんなに差がない。3 万 ~ 5 万くらい。
さらに版権モノといわれる「パッケージ」「広告」「雑誌用の描き下ろし」「テレカ」「タペストリー」「抱き枕」などのでかい絵はだいたいこの CG チーフが塗る。
そして忘れてはならないのが、その作品の映像カラーを決めるのは CG チーフなのである。「あれ!? それは原画家さんの役目じゃ?」と思う人もいるかもしれない。ところが作品の映像的カラー(雰囲気、特色)は圧倒的に CG の手によるものが大きいのだ。
どんなに原画家さんがいい絵をあげてきても、CG さんのセンスが悪いととても悲しいことになってしまう。また逆に少々原画が下手でも、CG さんのセンスが良ければこれがなかなかけっこう見られてしまうのだ。え、具体例を出せって? いやね出せるんだけどさ、ボクがそれを出した瞬間、悪い方の例のメーカーさんはボクを目の敵にすること間違いなしなので出せないのよ(爆)。個人的にボクに聞いてくれれば、お答えします!(マテ

そんなわけで実は CG、特に CG チーフの存在ってのは非常に重要だし、ぶっちゃけてしまえばそのブランドのカラーを決めているのも CG チーフさんと言える。

なので原画家さんと同じくらい CG さんの名前はもっと出すべきだとは思っていて、そしてもっとユーザに CG さんは褒め称えられるべきなんてことも思っている。実は、ある作品が売れて、その作品の原画家とシナリオ・ライターが引き抜かれたんだけど、その後さっぱり作品が出ないとか、その後の作品が妙にレベルが下がったりなんてことはよくあると思うんだけど、アレの原因は CG チーフさんも引き抜かなかったからなんだよね。結局原画家ってけっこう CG に助けてもらっている所があるし、そもそも原画ではおかしくなかった絵も、塗ってみると実はおかしかったりすることがあって、そのために原画家や CG チーフが塗り上がったとに原画を直すなんてことは日常茶飯事なのだ。
どうして原画段階ではおかしくないのに、塗り上がるとおかしくなるなんてことがあり得るのかというと、これは塗ることによって陰影がつくことが主な原因だ。陰影がつくと人間の目は奥域を持った 3D 的解釈をする。すると実は手が短かったり、足の間接の曲がりが変だったり、身体のバランスがおかしかったりしているのに気付くのだ。なので改めて原画家さんや CG さんがその部分を直して塗り直したりしている。これが下手クソな CG が塗ると、陰影もデタラメになるため、よけいおかしくなり、原画そのものが崩壊したり、逆におかしな所に気付かなかったりして絵としてのクオリティが下がってしまうのだ。

でね、CG チーフ。去年の 10 月頃からずっと探し続けている。実はアテは 4 人あった。一人はものすごく忙しいので断られた。もう一人は原画家を目指しているということで断られた。残りの二人は「もう CG チーフはイヤだ」という理由で断られた。そう、CG チーフはたくさんの仕事がある割に、誰にも注目してもらえないし、給料も普通の彩色さんよりちょっと高いだけ。それならばその腕を活かして外注として食っていく方がよっぽどお金になるし、時間も自分でコントロール出来るのだ。
腕さえ良ければ、1 ヶ月で 40 万以上稼げる。さらに単価の高いところ(コンシューマ系や、リーフさんなどの有名どころ)を捕まえれば単価はもっと上がるのでさらに稼ぐことも出来る。ところが CG チーフとして社員でいるとせいぜい手取り 25 ~ 30 万が普通。下手をすると 20 万以下の所もあるんじゃなかろうか……。

そんなわけで、CG チーフの価値って言うのはもっと市場で高めていく必要があると思う。それこそ、原画家さんとタッグになるべきは、シナリオ・ライターではなく CG チーフなのだ。というわけで、ボクに CG チーフをください、おながいします<そこかよー

6 thoughts on “彩色という役割”

  1. 彩色された同人誌を出している原画家さんとかは、どうなんだろう、とふと思ったんですが。
    彩色スキルを兼ね備えてるのか、それとも同人の場合でも採食屋さんに頼んでるのか。

    1. あくまでもボクの周囲の同人作家の話になりますが、お気に入りの塗り師を確保している人は多いです。もちろん自分で塗ってる人もいます。また、よくボクが同人作家さんから塗りを依頼され、知人の塗り師に塗ってもらうと言うこともあります。ですので、塗り師を頼っている人はけっこういるのではないでしょうか?

  2. ゲーム内で「この原画さん良いな」と同人誌を買うと「あれ?」と
    思った事があったのはそういう事なんですね。納得致しました。

    やっぱりCGチーフの腕なんですねw

  3.  個人的に翼をくださいの色使い、好きでした。キャラの髪の色の影響?←

     そういえば、某オレンジなブランドが一つ前の作品(というか今の最新の作品がその続編)から塗りを変えましたね。原画家さんの名が知られているブランドだけに思い切ったことをしたと思うのですが、これも実は原因はCGディレクタ変更とかだったりするのでしょうかw

    1. あの方は実力はすごいです。もっと有名になってもいい技術とセンスを持っています。
      ブランドで塗りが変わるのは、CG チーフの入れ替えもありますが、CG の塗りってどんどん変わって行っているので、そのままだと古くなってしまうため、メーカとしては刷新することがあります。ので内部事情が解らないと何とも言えないかも(汗)。

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