変な切り口で季節を味わう

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いつもだいたい忙しいボクは、季節を感じる余裕がないことが多い。要するに、春が来ても夏が来ても、とにかく忙しいので季節なんて関係ないのだ。ただひたすら PC の前にかじりついて作業をしているか、誰かと打ち合わせをしているか。まぁそんな感じなのだ。
せいぜい着るもんが変わるなぁみたいな?

ところが今年はとても季節を感じている。それもいつもとは違う感じ方で(笑)。
どういう感じ方かというと「あれ、この仕事始めたの、まだ肌寒かったのに、今、凄い暑いね。その頃には終わってなくちゃいけない仕事じゃなかったっけ?」みたいな感じ方(汗)。要するに仕事を始めたときにだいたいスケジュールってのは決まっているので、「あぁ、夏頃に終わるんだな」とかそういうことを考えているわけですよ。
で、今もう夏じゃん。っていうか 8 月って夏も後半じゃん!
セミがうるさいよ!
ちょっと歩いただけで汗だくだよ!
なのにシナリオ、まだこれだけしかできてないんだけど!? あれ? もう終わってなくちゃいけないんじゃなかったっけ!?

みたいな~。
そんな季節感。
やばいなぁ、やばいぞぉ。そんなわけで、戦々恐々としながら今日もシナリオ入力中。
ちなみに一日のリズムは、だいたい 12 時頃起きて家のことやったりシャワー浴びたりして、14 時頃出社。打ち合わせとか、ブランド全体のボクの仕事(広報・会計・各種書類作りなど)、各作品の成果物チェックなんかをやって、それらが終わるのが 21 ~ 22 時頃。それからシナリオ入力。1 日のノルマは 10KBytes。早ければ 1 時に終わるけどそんなすぐ終わることはないので、だいたい 3 時頃~ 4 時頃終わる。で、自分のプロジェクトの成果物のチェックとか、発注とか。で、だいたい 4 ~ 6 時に帰宅。7時頃就寝。
他の社員がだいたい 20 ~ 23 時頃までいるので、その時間まではなんだかんだで色々と雑用が発生して、シナリオに集中出来ないのよねぇ~。でもリズムは出来つつあるから、この調子で頑張りたいところだ。できれば 1MB 近く入れたいなぁ。

クオリティのばらつきとギャランティ

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今直面している問題として、クオリティのばらつきとギャランティをどうしようかというものがある。今まではさして問題にならなかったというか、社内の調整役に頼っていた側面がある。が、今回、特に CG 彩色においてかなりのばらつきが発生し、ついに CG チーフが切れてしまったのだ。
どういうことかというと、エロゲの CG というのは社内の人員でも塗るが、人海戦術ができるため、外注にお願いすることも多い。そうすると、上がってくるデータというのは個人差がありばらつきが出てくる。このばらつきを一つの作品として統一するのが、CG チーフの役目である。
外注に CG を塗ってもらう場合、特に何か他と違う要素がない限り、金額は同じである。ところが上がってきたものには、CG チーフが調整しやすいもの、しにくいものがある。下手をすると CG チーフがほとんど塗り直しをしなければならないものが上がってくることもある。また、ほとんど手を加えなくてもよいものがあがってくることもある。
たくさんの人に出しているのでばらつきが出るのは仕方がないのだが、CG チーフが修正をするのが大変なデータに関しては、正直同じギャランティでいいのか……という疑問が残る。そしてそういう所はだいたい同じ外注さんで有り、そして何度言っても直らない人も多い。
まぁ、彩色なんてのは人それぞれで、ウチの会社にあわせるだけでも一苦労という人もいるだろう。とは言え、会社ごとに塗りやレイヤーの管理の仕方は違うわけで、外注である以上、それを吸収出来なければ外注として CG を塗るという仕事は成り立たないはずだ。

かといって、「1 枚○○円です」って出しておきながら、「レベルが低かったので、値段下げていいですか?」と言って良いものか……? まぁ、今回はいくつかの外注さんに関してはそれを言ってしまったのだが……それほどまでにクオリティが低い外注さんがいたのである。
ただこちらにも責任があって、「その外注を選んだからには、その外注のクオリティをチェックしたんだよね?」という問題がある。もちろんチェックするのだが、相手が個人だったらそのチェックだけでよいのだが、相手が会社だった場合、その会社の誰が担当したかによってばらつきが出てきてしまい、今回は泣かされた。本来、会社で CG 彩色を受けるなら、その会社内でクオリティを統一させるべきなのだが、社内にうまい人と下手な人がいた場合、その統一は難しいだろうなぁとは想像出来る。というのも、CG 会社としてうまい人の絵をアピールしたいだろうし、かといって下手な人のヤツをうまい人のレベルに社内で修正していたら、それはうまい人だけが仕事をすることになってしまい、下手な人は仕事が回ってこないからだ。

まぁそんなこんなで、今後、外注さんに発注する前に「クオリティ」と「ギャランティ」の関係も説明しつつ発注する必要があるのかなと何となく感じている。じゃないと、結局 CG チーフの手が取られ、それはそのままコストに反映されるからだ。6/28 に発売したソフトなんかでは、そのクオリティの低い外注さんのおかげで、倍以上にもコストが膨らんだ CG も出てしまったほど……。はてさて、どうしたものやら。

彩色という役割

6/28 にボクが管理しているブランドの第一弾となる「サンタフル☆サマー」というのが発売された。ボクは作品のできについてはけっこう満足していて、気に入っている。ただしボクは中身には携わっていない。飽くまでもディレクタをちょっと補佐したくらい。この作品はディレクタやシナリオ・ライターの力によって出来あがった作品である。
2ch での評判もなかなかよく、ホッと胸をなで下ろしているところである。
ただ、エロゲ批評空間だと評価がそんなに高くないのよね……どうしてこんなに開きがあるんだろうか(汗)。

さて、この「サンタフル☆サマー」という作品、ひたすら彩色さんを巡る戦いだった。いや、その戦いをしていたのはボクだけだったのだろうが、とにかく彩色するひとに困ったのだ。彩色とはなにをする人かというと原画家が描いた絵に色を塗る人のことである。ただ一言に彩色と言ってもいろいろと役割がある。

  1. 色彩設計
    キャラクタ設定に色をつけて、色設定を作っていく
  2. 仕上げ
    彩色は一人の人間がやるわけではないので、色んな人がやった彩色を一つの作品として統一していく。
  3. 彩色
    1 の彩色設計を元に、原画に色をつけていく。

上の場合、1 と 2 はだいたい同じ人がやることが多い。この 1 と 2 をやる人のことを「CG チーフ」もしくは「CG ディレクタ」と言う。で、サンタフル☆サマーではこの「CG チーフ」の獲得に非常に困難を極めたのである。というのもこの CG チーフ、実は割に合わない仕事なのだ。
色彩設計をし、そして色んな人があげてきたバラバラの CG(いちおう設計図は渡すけれどもどうしても塗る人の個人差は出てしまう)を統一させる。さらに CG の発注などもこの CG チーフが請け負う。それでいて、給料って言うのは普通の彩色だけする人とそんなに差がない。3 万 ~ 5 万くらい。
さらに版権モノといわれる「パッケージ」「広告」「雑誌用の描き下ろし」「テレカ」「タペストリー」「抱き枕」などのでかい絵はだいたいこの CG チーフが塗る。
そして忘れてはならないのが、その作品の映像カラーを決めるのは CG チーフなのである。「あれ!? それは原画家さんの役目じゃ?」と思う人もいるかもしれない。ところが作品の映像的カラー(雰囲気、特色)は圧倒的に CG の手によるものが大きいのだ。
どんなに原画家さんがいい絵をあげてきても、CG さんのセンスが悪いととても悲しいことになってしまう。また逆に少々原画が下手でも、CG さんのセンスが良ければこれがなかなかけっこう見られてしまうのだ。え、具体例を出せって? いやね出せるんだけどさ、ボクがそれを出した瞬間、悪い方の例のメーカーさんはボクを目の敵にすること間違いなしなので出せないのよ(爆)。個人的にボクに聞いてくれれば、お答えします!(マテ

そんなわけで実は CG、特に CG チーフの存在ってのは非常に重要だし、ぶっちゃけてしまえばそのブランドのカラーを決めているのも CG チーフさんと言える。

なので原画家さんと同じくらい CG さんの名前はもっと出すべきだとは思っていて、そしてもっとユーザに CG さんは褒め称えられるべきなんてことも思っている。実は、ある作品が売れて、その作品の原画家とシナリオ・ライターが引き抜かれたんだけど、その後さっぱり作品が出ないとか、その後の作品が妙にレベルが下がったりなんてことはよくあると思うんだけど、アレの原因は CG チーフさんも引き抜かなかったからなんだよね。結局原画家ってけっこう CG に助けてもらっている所があるし、そもそも原画ではおかしくなかった絵も、塗ってみると実はおかしかったりすることがあって、そのために原画家や CG チーフが塗り上がったとに原画を直すなんてことは日常茶飯事なのだ。
どうして原画段階ではおかしくないのに、塗り上がるとおかしくなるなんてことがあり得るのかというと、これは塗ることによって陰影がつくことが主な原因だ。陰影がつくと人間の目は奥域を持った 3D 的解釈をする。すると実は手が短かったり、足の間接の曲がりが変だったり、身体のバランスがおかしかったりしているのに気付くのだ。なので改めて原画家さんや CG さんがその部分を直して塗り直したりしている。これが下手クソな CG が塗ると、陰影もデタラメになるため、よけいおかしくなり、原画そのものが崩壊したり、逆におかしな所に気付かなかったりして絵としてのクオリティが下がってしまうのだ。

でね、CG チーフ。去年の 10 月頃からずっと探し続けている。実はアテは 4 人あった。一人はものすごく忙しいので断られた。もう一人は原画家を目指しているということで断られた。残りの二人は「もう CG チーフはイヤだ」という理由で断られた。そう、CG チーフはたくさんの仕事がある割に、誰にも注目してもらえないし、給料も普通の彩色さんよりちょっと高いだけ。それならばその腕を活かして外注として食っていく方がよっぽどお金になるし、時間も自分でコントロール出来るのだ。
腕さえ良ければ、1 ヶ月で 40 万以上稼げる。さらに単価の高いところ(コンシューマ系や、リーフさんなどの有名どころ)を捕まえれば単価はもっと上がるのでさらに稼ぐことも出来る。ところが CG チーフとして社員でいるとせいぜい手取り 25 ~ 30 万が普通。下手をすると 20 万以下の所もあるんじゃなかろうか……。

そんなわけで、CG チーフの価値って言うのはもっと市場で高めていく必要があると思う。それこそ、原画家さんとタッグになるべきは、シナリオ・ライターではなく CG チーフなのだ。というわけで、ボクに CG チーフをください、おながいします<そこかよー

1/2 summer+ 、発売されました

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PSP 版 1/2 summer 、発売されました。
『紗乃末璃』というキャラのシナリオを担当しています。その他、色々。
裏話など書きたいことはたくさんありますが、怒られるので、とりあえず報告まで。

ただこの『紗乃末璃』ルートでこの作品の総括は出来たのかなと思いつつ、肝心の『クロハ』もとい『黒翼』については、謎のままです(ぉ。個人的に気になるのは、イチャラブの部分でしょうか……。ちゃんと出来ているか、不安ではあります。
何はともあれ、機会があればプレイしてみてくださいませ。ただ『紗乃末璃』はちょっと出現フラグが面倒かもしれませんが……(汗)。

ただ、twitter などの反応から察するに、やはりボクに求められているのはこの手のものではないのだなぁと感じました。まぁ、当たり前ですかね……でも最近は「暗い話に見えそう」と判断されただけでまったく買われないそうで、増々ボクの生きる道が閉ざされているような気がします(爆)。

今頃なんで気付いた『½』(ゲームのタイトルの話

すっごいどうでもイイ話をうだうだと。 1/2 summer っていうゲームがあるんだけど、コレのタイトルを考えたのはボクなのね。「ワンサイド」という読みは原画家さん。ボクは別に「にぶんのいちサマー」でもいいかなぁなんて思ってたんだけどね。ただこのタイトルで問題なのはファイル名を作れないこと。Windows では半角 / が使えない。だからずっとファイル名やフォルダ名は summer ってつけてた。 で、今頃になってさ「½」「⅓」「¼」っていうフォントがあることを思い出した。 くそー、なんでもっと早く思い出していなかったのだ。 ½summer ってフォルダつくればよかったじゃん!

まぁそれでも解決しないこともあるんだけどね。それは、URI 。これは 2 バイト系文字は使えないので、結局こっちは summer って使ってた。

でね、思ったんだけど、タイトルってさ、「文字」を使うじゃない? もういい加減もう文字に拘る必要はないんじゃないかなと思っている。「☠」とかw 「☄」とかw Unicode は面白くて、特殊文字がけっこうある。

タイトルってさ、実はボクは自分の企画の場合すぐ決まるのよ。ところが、そこから先が大変。他のスタッフから気に入らないと言われたり、流通からは気に入らないといわれたり。でも、名は体を表すのごとく、企画者であるボクはそのものズバリのタイトルをつけたつもりなんだけど、なかなかそこは理解されづらい。 結局タイトルが決まるのに何ヶ月もかかることがある。今ボクが担当しているゲームも、タイトル自体は年始に考えついていたのだけれど、結局あれやこれやとあって決まったのは 6 月という、半年もかかっていたりする(汗)。他の会社がどうやってタイトルを決めているのか、ちょっと気になるなぁなんて思った。

違法ダウンロード、キタ────!

発端は 7/1 の glace.me サーバのログがおかしいことだった。どうおかしいかというと、特に新しい更新ぶつも何もないのに、1 日 15,000 ユニーク IP 来ていたからだ。ハテ? どっかのニュースサイトに載ったのかなぁ?と思いながら、Referer を調べて見ると……。
あ、ちなみに Referer とは glace.me 上のデータがどこのサイトから参照(reference)されたかが記録されている、ログの中の一項目である。HTML に限らず、ブラウザでアクセス出来るすべてのデータはブラウザでアクセスすると、その前はどこのページにいたか記録されるのだ。ただこれはブラウザがサーバに返している情報なので、ブラウザ側で偽装は可能である。例えばセキュリティ対策ソフトではこの Referer を返さないようにできるものもある。
ただ Referer を返さないとちゃんとページを表示しないサイトもあるので要注意だ。fc2 さんや itmedia さんなんかは Referer がちゃんと設定されていないと画像ファイルにアクセス出来なかったりする。

で、ウチに大量にアクセスが増えていた原因は、海賊版の BitTorrent のインデックス・ファイルを配布しているサイトだった……orz しかも 2 サイトもある。その時の twitter の記録は、以下の通り。

この用は違法ダウンロードサイトからオフィシャル・サイトにリンクを張るという神経がよう解らんw 掴まるリスクはないと踏んでいるのかなぁ? ちなみにその後も別のダウンロード・サイトにバナーを貼られ、その時は DDos 攻撃化してしまい、バナーを置いてある dl.glace.me がダウンしかかった。
やっぱり凄いんだな、違法ダインロード・サイトの人気。アフィリを貼っておいたら、きっと笑いが止まらないほど儲かるんだろうな。

ただここでもう一つの希望が。
前に日記にも書いたけれど、「寄付画面」ってやっぱり意味があるんじゃないかなってこと。最低でも英語で「このソフトを無料で手に入れた方へ」とか言うボタンを作っておいて、コピーへの影響を説明し、寄付先及び寄付の方法を記した画面をつけたら寄付をしてくれる人がいるんじゃないだろうか?
まったく無駄じゃないとおもうんだよねー。
もしくは、OVER DRIVE さんがやっていたような amazon の欲しいものリストの公開とかね。

エロゲの買い方

今月、自分のブランドからソフトが出るわけだけれど、世の中のエロゲの買い方とボクが物を買うときの常識がまったく異なるので、記事にしてみたいと思う。まずはボクの買い物をするときの前提情報から。ボクは世間から見れば「オタク」という部類に入るのだけれど、「オタク」の人たちから見たら、オタクとは呼べないらしい。
確かにかつてはコレクター癖があったけれど、今はまったくそんなものはなく、同人誌を始め、膨大に所有していたコレクション類はすべて捨ててしまった。今じゃ漫画も買わないし、エロゲも買わないし(そもそもエロゲは数えるほどしか買ったことがないが)、アニメもまったく見ない。
そもそもボクの興味あることと言えば、最近の数学・物理やテクノロジー、国際情勢・政治、そしてコンピュータである。そしてそれらは「自分の作品」を磨くためにやっているわけだが、自分の作品を作る機会に巡り会えていないって言うか、いや、同人で全然いいんだけど、ここ2 ~ 3 年はまったくもって忙しすぎて何も出来ていない。

って、そんな話はどうでもいい。
そんなボクが買い物をするとき、どうするかというと、そもそも「予約」という考え方がない。何かがほしいと思ったら、その時になって買う。それがたまたままだ発売されていないモノであったら予約を入れることもあるだろうが。そして「特典」というのにまったく興味がない。だいたい趣味のモノってさ、10 年後にはゴミになるんだよね。本とかフィギュアとかまぁなんでもいいけどさ、物質は結局いつかはゴミになる。なのでそもそも「いらない」って考えている。
ただ「データ」ならいいかなって思う。例えばテレカとかさ、B2 タペストリとかさ、あの手のヤツだったらその絵のデータが欲しい。テレカそのものとかタペストリそのものはいらない。だって特典物なんてあんまりお金かけられないから、安い業者に出すし、印刷なんてぼろいし、布だってイマイチだし。そんなのに印刷されたものなんて限界があるわけで、それだったら印刷する前の絵のデータが欲しいよ。Windows の壁紙として表示するほうがよっぽどキレイだしいつまでも色あせないし(ディスプレイは経年劣化するけど、買い換えればいいわけで)。
だからこの手のでもしボクがほしいと思うなら、電子インク式のタペストリーやポスターじゃなかろうか。そうすればそれにデータを与えるだけで好きなポスターになるし、飽きたらデータ変えられるし。

翻って、エロゲはどうか? これは飽くまでも作り手から見た視点でしかないのだけれど、どうやら以下の傾向があるようだ。

  1. 販売本数≒予約本数
  2. 特典物が出そろわないと、予約しない

今のエロゲはほとんどが予約に頼っている。これはほとんどのユーザさんが予約して買うというのもあるが、販売店が在庫を抱えたくないというのもある。前者はともかく、後者の場合、それはエロゲに限ったことではないのか、それともエロゲだけそうなのか知りたいところだ。
次に特典物だが、これは各店舗が用意する特典物だ。たとえばサンタフル☆サマーだとこんな感じ。色んな店舗さん用の特典が有り、各店舗ごとにその内容は違う。これらの絵はメーカーであるボクらが用意するが、製造は各店舗が行う(メーカーが作って、ぜひこれを付けてくださいって店舗に渡すこともあるが)。
5 ~ 6 年前まではこれら特典物の絵というのは、開発からすればかなり後回しだった。それこそマスターアップしたあと一気に作るなんてことをやっていたし、ボクもついそのノリでスケジュールを切ってしまったりしてあとで広報に怒られることがある。でもそれくらい開発はキツキツなのだ。ゲームで使わないデータを作る余裕なんてないのである。
ところが今は予約を開始する時点でこれら特典物の絵が出そろっているのが望ましい。

ここで少し予約の説明を。
エロゲの予約はだいたい発売日の 3 ヶ月前から始まる。ビッグタイトルだと半年前、一年前なんてのもあるけれどおおむね 3 ヶ月前からだ。発売日の 3 ヶ月前なんてもろに開発真っ最中なワケで(なので個人的にはマスターアップしてから広報活動したい。またそういうメーカーもある)、しかも予約開始時にそれらの絵が揃っていなければならないことを考えると、さらにその 1 ヶ月以上前から作り始めていないと行けないわけで……。
ところでこの特典の絵はどうやって決まるかも説明しよう。メーカーはまずリリース情報(発売日やだいたいの内容、キャラの説明など)ってのを問屋さんに送り、問屋さんが各店舗にその情報を伝える。この時に「ヒロイン(キャラ)の情報」ってのも渡してあげて、さらにメインは誰でどれが人気でそうかっていう説明も一緒に付ける。
店舗さんはそれらの情報や過去のそのブランドの売上本数など見た上で、「どういう特典がいいか」ってのを決める。
絵の内容を決める方法がいくつかあるが、おおむね以下の三つ。

  1. 完全にメーカーが作り、店舗さんはその中から選ぶ
  2. 店舗さんにキャラと絵の内容の希望を募る
  3. 使えるキャラとだいたいこんな絵になりますっていうのを見せて、それを元に店舗さんの要望(服をはだけさせてとか、私服じゃなくて制服がいいですとかそういう要望)もある程度入れる。1 と 2 を足したようなやり方

そんなわけで、最早開発と広報活動はすでにがっちり絡み合っており、開発の中に広報素材のためのスケジュールというのも組み込んでいかなければならず、しかも特典物の絵ってゲームの絵より巨大なのが多い。例えばうちのブランドの場合、イベント・シーン用の CG ってのは 3600 x 2400 ドットで彩色しているんだけど、抱き枕は 4252 x 13071 ドットもある。B2 タペストリは DPI によるけれども4252 x 6851 ドット。PSD ファイルは 2GB を越えることもしばしば。原画にも彩色にも非常に手間がかかるのだ。

あぁ、なんか話がそれたな。そもそも今回は開発の話じゃないw
そうそう、予約の話。
要するにボクは「予約しない」「物質としての特典物はいらない」っていう考えの持ち主であるため、エロゲの買われ方があまりにも自分の考えと違うために、どうにも戸惑ってしまっているわけだ。特典物なんて「あ、特典つくんだ、へー」くらいにしか思ってないから、「予約開始までに特典物の絵柄を決めろ」とか言われても、「へっ? あんなもん開発終わってからでいいじゃん」って思ってしまうわけだ。
でも 2ch のエロゲのスレッドとか見ていると、確かに「○○店の絵柄はどうよ」とか「絵柄出そろうまで予約出来ないじゃないか、はよ!」みたいな書き込みは多い。それで二度びっくりですよ。「うへぇ、特典の絵とか気になるのか!」ってのがボクの正直な感想なのである。
まぁ、そんなだから、ボクの作品は売れないのかもしれないけどね(笑)。でもさ、そんな特典物つけるくらいだったら、その労力をゲームの中身につぎ込めよって思う。グッズはグッズで別で作ればいいじゃない。特に特典物なんてかけられる金額が決まってるから、いいものはなかなか作れない。すぐにボロボロになったり色あせたり、そもそも色が悪かったり……。だから絶対に劣化しないデジタル・データならともかく(CG 集とかサントラとか)、やっぱり物質の方はいらないよなぁ。それこそさ、B2 タペストリとか抱き枕カバーとか、A&J さんとかすっげーお高いところに出せるなら、まぁいいのかもしれないけど(それでもいつかはゴミになる)。

まぁ、そんなわけでボクの価値観と世のエロゲ販売の価値観が全然違うので、ボクはまったく口出さないようにしている。解る人に任せる、それが大事。ボクはそこで提示されたことを、開発の責任者としてちゃんとこなせば良い。それがボクの仕事である。