宣伝すべき情報ってなんだろう?

ウチのブランド(GLacé / Galette)はデビューしたばかりで、しかもメイン・ブランドはまだ一本も作品を出していない。いわゆる無名ブランドというヤツである。なので当然、知名度も低い。でも、エロゲ・ユーザの 8 割以上はインターネットを通じて作品の情報を得ているらしい。
エロゲ雑誌はかなり厳しい状況にあるとのこと。

で、なにを思っているかというと、ネット上に公式サイトを作り、それを色んな所からリンクしてもらえれば、基本的に8 割のユーザは「買ってくれるかどうかはともかく」、「そういうブランドがあるんだ」くらいは知ってもらえるんじゃないのかなぁと思っていた。
というか、現にボクは何か趣味の物を買おうとしたとき、ネットでいろいろ探せば、マイナー所も含めてわりと探せるからだ。だから他の人もそうしているのだろうと、そう思っているのである。

しかし、音楽の世界と同人の世界はそうもいかない。たとえばボクが「プログレ・バンド」をインディーズまで含めて探そうとすると、これがなかなか「すべてを網羅」することができない。小さなバンドや、あまり拡散に力を入れていないバンドなんかはまったく引っかからず、1 年くらいして「おお、こんなバンドあったのか!」って慌てて CD を買うなんてことがある。
同人も同じで、自分の好みのものを探すのは非常に骨が折れる。
このどちらも、小さなバンドやサークルが多すぎ、目的の情報にたどり着けないという印象だ。

さて、エロゲはどうか?
みんなエロゲの情報はどうやって得ているのだろうか? これはボクのイメージでしかないのだが、同人やバンドほど細かいのがたくさん有るというイメージはあまりない(ただしこれは 8800 円のフルプライス・ゲームをリリースしているメーカーの話である。低価格帯の抜きゲーとかを入れてしまうと、これが相当量に上り、ボクも全体把握出来ていない)。
つまりちょっと検索したら目的の情報にわりと行き着きやすいのではないかと思っている。

なにが言いたいかというと、エロゲの場合、弱小ブランドであっても、エロゲ・ユーザには情報そのものはわりと行き渡っているのではないかと考えていたのだ。つまり「売れない=告知不足」というよりは「売れない=ユーザに見向きもされなかった」って考えていたのだ。というか、今でもそう考えている部分もある。
といいうわけで、「GLacé というブランドがあって、そこが 12/20 にゲームを発売しますよ」という情報そのものはおそらくそんなに力を入れて拡散すべき情報ではないのだろうなと。そしてだいたいの内容も。はて、となると買ってもらうようにするにはどんな情報を発信していくべきなのだろうか? エロゲ・ユーザが実際に「これを買おう」と思わせる情報ってのはどんな情報なんだろうか?
そこで、ボクの思考は停止している(汗)。
なに? なにをアピールすればいいのん? それは「ボクの考えたこのゲームの面白いところ」ではないとおもうんだよね。
もちろんゲームを企画するとき、どういうターゲットに向けて、ゲーム内のどういう部分をおもしろがってもらうかってのは当然議論され、またそれらはキャッチ・コピーなどで使われている。
でもそれだけじゃダメな気がする。
体験版?
声優?
主題歌?
プロモーション・ムービー? / トレイラー・ムービー?
口コミ?
エロい CG?
キャラクタ?
プレゼント?
ユーザー参加型的な何か?
イベント(ライブなど)?
そんなわけで、発売まであと 2 ヶ月。どんな情報を見せていったらいいんやろうか? ずっと悩んで数ヶ月が過ぎている。

他にも考えるべきことがあって、たとえば上の例で言うなら、ボクなんかは欲しいものができたらそれのために情報を集めいろいろ調べたりするんだけど、そういう能動的なユーザは少なく、わりと自分では調べないユーザの方が多いのではないか?
次に本当に情報そのものが行き渡ってないのではないか?
この二つのユーザにはどうやって情報を伝えるべきか? と言う所も、悩み所である。

違法ダウンロード対策

9/27 に発売された、ウチのブランドの「お兄ちゃんシェアリング」だが、28 日には twitter から違法にアップロードされたサイトへ誘導するツイートが流された。これは HTTP でダウンロード出来るという代物で、つまり、普通にブラウザでダウンロード出来る。
次にツイートされたのが、BitTorrent のインデックス・ファイルを配布するサイト。
そしてその後にもう一つ、HTTP でダウンロード出来るサイトがアナウンスされた。

今回、これら三つのサイトに関しては Google 検索への削除、さらに Twitter への通報、そして BitTorrent のインデックス・ファイルを公開していたサイトは FC2 だったので、FC2 からそのサイトの閉鎖をお願いした。

一番反応が早かったのが Google で二日後には検索に出ないように削除してくれた。
FC2 からは翌日にサイトオーナーとコンタクトを取り始めたという連絡が来たが、その後、現在(10/28)でも続報はない。が、コンタクトには時間を要する場合もあると書かれているので、まずは一ヶ月様子を見るつもりである。
Twitter に関しては、なしのつぶてである。
違法アップロードサイトに誘導する Twitter のアカウントは、他の色々なゲームの違法アップロード・ページへと誘導しており、正直、ツイートの内容を見ればすぐに解りそうなものなのだが、まったく音沙汰がないのもどうかなぁと思っている……orz

しかしなんと言っても当面の敵は、自分自身である。もちろん、違法にアップロードしたり、それをダウンロードする人が敵なわけだが、それ以前にボク自身がそういった問題に対応する余裕が全くなく、ゲームを作るので手一杯という。だから他に打つべき手もほとんど取れないまま、時間だけが過ぎていく。
困ったもんだ……。

写真は国道 4 号を走っていたときに遭遇した、なんかデカブツを運んでいるトレーラ。
1310130043

人気投票の悩ましい問題

ボクが関わっているブランドで人気投票をやったのだが、今回は不正投票があった。ただ、これを「不正投票」と呼んでいいかは疑問ではある。とりあえず今日の日記では「不正投票」と表現するが、ボク自身はこの行為自体を 100% 悪しきものとは考えていないことを最初に記しておきたい。

投票自体は終わっているので、その投票画面にリンクを張ることは出来ないのだが、 4 人のキャラクタのうちから好きなキャラクタを投票するというものだ。仕組みは非常に簡単で、いわゆる「カウンタ」を利用している。よくサイトのトップでみかける「何人来ました」っていうヤツだ。各キャラクタごとにカウンタが設置されており、「好きなキャラクタを選ぶ」=「そのキャラクタ専用のサイトに訪問した」と解釈するわけである。これによってカウンタが一つ上がり、そのキャラクタの票が一つあがることになる。
そして 4 人分のカウンタをグラフ表示するための CGI が別途あり、そこでどのキャラが何位なのかが解るようになっている。下の絵がグラフ表示されたものである。
result
で、カウンターは cookie を使って同じ人かどうかをチェックしている。また cookie の寿命は 24 時間に設定されている。つまり 24 時間経過するまでは何度投票してもカウンタは増えない(無効票となる)。同じ人かどうかは IP アドレスではチェックしていない。というのも現在は NAT がかなり広範に普及しており、同じ IP でも違う人がアクセスすることは珍しいことではないからだ。

さて、サーバの HTTP ログを見たところ、「桜織」と「十和子」というキャラに不正投票があった。不正投票する方法は実に簡単で、この Cookie を削除してもう一度投票すればよいのだ。Cookie が削除されると寿命が切れたことになり、もう一度投票出来る。これをくり返せば、何度でも有効票が投票出来てしまうのだ。
従ってこの Cookie を使った仕組みそのものが「何度でも投票出来る」という状況を作り出している。そしてこれは誰にでも簡単にできてしまうので「不正投票」と言い切れないのだ。つまり仕組み自体がよくない。

投票した方もその仕組みを自覚しているらしく(?)、大量に票を入れていない。一度には 8 ~ 12 くらい。それをある程度時間をおいて行い、ちょっとずつ投票しているのだが、しかしほぼ 24 時間でビリだったキャラクタが一位になってしまった。まぁだから「不正投票があった」とこっちも勘づいてしまったのだけど。
この辺の増加量は難しいもので、ウチが弱小ブランドだっていうのもあるかもしれない。一度に 8 ~ 12 入れても全然影響しないような人気ブランドだったら、たぶん本当にちょっとずつ上がっていき、知らず知らずのうちに一位になっているということもあったのだろうが、ウチはそこまで人が来ていないのか、8 ~ 12 増えただけでかなり形勢が変わってしまうのだ(汗)。

結局集計はこの一度に 8 ~ 12 投票したヤツを 1 票としてカウントした。それでも不備はあるものの、まぁ、細かい所を突き詰めてもしようがないし、このような不正投票が出来てしまう仕組み自体が問題なので、今回はこれで良しとしよう。レベルファイブさんなんかはこの不正投票も含めてネタにしてしまっているみたいだけど、ウチとしては正直、誰が一番なのかを知りたいし……。
他に方法としては順位をリアルタイムで見せないという方法もあるかもしれない。でもそうなると逆に 8 ~ 12 なんてカウント数では済まず、スクリプトとかで大量投票してくるかもしれない……。
あとはどうせ不正投票されるのなら、「同じ人は 24 時間経たないと投票できない」という制限そのものを取っ払う。とにかく投票すればそれがどんな状態だろうと、1 票とするというのも有りかもしれない。

さて、次回はどうしようかなぁ……どういう仕組みにすればいいのだろう。cookie 以外で同じ人かどうかを判別する方法はあるだろうか? 実はある。あるのだが、けっこう仕組みが面倒くさいというか、組むのが面倒くさい……。このへん、他社さんとかどうしているかいろいろ見てみる必要がありそうだ。

正しい日本語を使う必要はあるか!?

rural_rn00c
このところ少しずつシナリオを書いているわけだけれども、デバッグというかチェックに当然回される。で、いろいろ誤字脱字の指摘が返ってくるわけだが、その中で「ら抜き言葉」や「凄い・凄く」の用法違い、同じことを何度も言う指摘などがある。
誤字脱字はまぁ直すのだが、これら「ら抜き言葉」などの指摘に関しては、個人的にはそのままでいいんじゃないかなと思っている。
そもそも今書いている作品の登場人物は中学生から高校生くらいの年齢を想定して書いている(もちろんそれらは「何故か」18 歳以上ではあるが)。そうすると当然正しい日本語は使えないし、同じような言葉を何度も重ねてしまうだろうし、いや、それは何も中高生に限らず、大人だってそうである。
だから、「凄い楽しい」とか「見れる」といった日本語の間違いはそのままの方が自然な会話というか、本物らしい会話になると思うんだけどなぁ。

同じような関連事として、「口調」というのもボクは気になっていることがある。いわゆるアニメや漫画、エロゲなどのオタク文化に出てくる女の子の口調というのは習慣化されていて、同じ世代の現実の女の子と全然違う。なんていうんだろうね、女子高生言葉じゃないけど、とにかく今の女子中学生や女子高校生が使うような言葉の崩れが全くなく、各キャラクタの性格に相対した口調が何となく決まっている感じだ。極端な例だとツンデレは「○○なんだからね!」とか、お嬢様系だと敬語や「○○ですわ」みたいなヤツ。
アレも個人的には凄い不自然に思えて、「いや、女の子ってそんなしゃべりしないでしょ」って思いながらもシナリオを書いている。でもたぶん、ヒロイン達の口調を本当の女子高生のように書いたら売れないんだろうなぁ。

そんなわけで、人間の会話ってまったく正確じゃないし、何度も同じ言葉を使ったり、つっかえたり、言葉が止まったりする。それが会話だし、それが人間らしいとボクは思っていて、あんな教科書みたいに正しい言葉を使う会話こそが不自然でおかしいなぁと思っているんだけど、どうだろうか?

抱き枕とオナニーの関係

rural_sy00f
さて、いよいよ本日からコミケ 84 である。
この日はボクも売り子に立った。今回は、サンタフル☆サマーの T シャツを作ったので、スタッフみんなはそれを着て参戦。初日は企業の日とも言われ、企業ブースにもっとも人が訪れる日である。気合い入れるでー! というわけで、始まったけれども、まぁ所詮ウチのような弱小ブランドに人が並ぶということもなく……(ぉ
ウチの隣は戯画さんと RSK だったかな。両隣がどんどん並ぶ中、ウチは実に閑古鳥。
それでもちらほらお客さんが集まり始めて、並びはしないものの、常時誰かが買っていく状態にはなった。
今回売ったものの中でもっとも特異な商品は、「抱き枕カバー用香水」というもので、各キャラクタに香りを用意した。このキャラクタ用の香水というのは女性向けはけっこうあるんだけど、男性向けというのははじめてだった。結果的には予想したよりも売れたのだが、その中でも面白い現象が明確に現れたので日記で取り上げてみたい。

抱き枕カバーは実は 4 種類あった。売れた順に記す。

  1. 神ノ木  汐 -> Sofmap の特典に付いたもので、もっとも多く出ている
  2. 草薙 一葉 -> 攻略キャラではないのに、ウチのオリジナル商品では一番出た
  3. 久遠寺 空 -> 人気投票では一位
  4. 詩代 叶 -> 一番数が出なかったキャラ

神ノ木 汐というキャラは Sofmap の特典として作られたものなので、最も出回っている。その数、数千枚。それ以外のキャラクタは、メーカー通販として売ったもので、多くて何百枚、売れないと 100 枚台である。
では、香水の方はどうだったかというと、コレが以下のようになった。

  1. 神ノ木 汐
  2. 久遠寺 澄空
  3. 詩代 叶
  4. 草薙 一葉

というわけで、メーカー通販で最もたくさん出た草薙一葉がビリという結果になった。神ノ木 汐が出るのは、まぁわかる。しかし抱き枕カバーとしては草薙一葉が次に出ているのに、この草薙一葉の香水はさっぱり売れないのである。これはボクの予想を大きく裏切った。
何故だろう?
そこで気付いたことがある。
草薙一葉は攻略キャラではない。つまりこのキャラには H シーンがない。
ということからどういうことが言えるか?

つまり抱き枕カバーをつかってオナニーをするとき、エロゲをプレイしているのではないかと思ったのだ。そうすればエロボイスを聞きながらオナニーすることが出来る。ボクは抱き枕の場合、ユーザが自由にシチュエーションやプレイ内容を決めてオナニーをしていると思い込んでいたのだが、確かに声があった方が良さそうだ。そうなるとゲーム中の H シーンでオナニーするのが最も贅沢と言える。
ところが草薙一葉でオナニーをしようにも、そもそもゲームの中に H シーンがない。
だから、草薙一葉の香水は売れなかったんじゃないかなぁと推測したんだけど、どうだろうか?

じゃぁそもそもなぜ草薙一葉の抱き枕カバーが売れたのか?
もちろんボクが予想したとおり、草薙一葉との H シーンをユーザが創出してオナニーする場合もあるのだろうが、それよりもコレクター・アイテムとして、また、単純にキャラ人気(実際、草薙一葉は神ノ木汐を上回っていたのではないかとさえ思うほど人気があった)で売れたと言うことなのではないだろうか。

というようなことを、あの地獄のような暑さの中で商品を売りながら考えてみた<バカ
この日も無風で、本当に地獄だった。ここまで風のない有明の会場ははじめて経験した。シャッターの方に行っても、さっぱり風が入ってこない。コスプレの女の子は途中でダウン。まぁ仕方がない、用意した制服が Timepiece Ensemble のなんだけど、この制服、冬服なのよね(汗)。

なおこの日は、一日来場者数を更新したそうで 21 万人の人手だったそうだ。
コミケに来た皆さん、そして出展したみなさん、お疲れ様でした!
130810DSCF5303 130810DSCF5304 130810DSCF5306
130810DSCF5307 130810DSCF5308

クオリティのばらつきとギャランティ

bs_zuho01m
今直面している問題として、クオリティのばらつきとギャランティをどうしようかというものがある。今まではさして問題にならなかったというか、社内の調整役に頼っていた側面がある。が、今回、特に CG 彩色においてかなりのばらつきが発生し、ついに CG チーフが切れてしまったのだ。
どういうことかというと、エロゲの CG というのは社内の人員でも塗るが、人海戦術ができるため、外注にお願いすることも多い。そうすると、上がってくるデータというのは個人差がありばらつきが出てくる。このばらつきを一つの作品として統一するのが、CG チーフの役目である。
外注に CG を塗ってもらう場合、特に何か他と違う要素がない限り、金額は同じである。ところが上がってきたものには、CG チーフが調整しやすいもの、しにくいものがある。下手をすると CG チーフがほとんど塗り直しをしなければならないものが上がってくることもある。また、ほとんど手を加えなくてもよいものがあがってくることもある。
たくさんの人に出しているのでばらつきが出るのは仕方がないのだが、CG チーフが修正をするのが大変なデータに関しては、正直同じギャランティでいいのか……という疑問が残る。そしてそういう所はだいたい同じ外注さんで有り、そして何度言っても直らない人も多い。
まぁ、彩色なんてのは人それぞれで、ウチの会社にあわせるだけでも一苦労という人もいるだろう。とは言え、会社ごとに塗りやレイヤーの管理の仕方は違うわけで、外注である以上、それを吸収出来なければ外注として CG を塗るという仕事は成り立たないはずだ。

かといって、「1 枚○○円です」って出しておきながら、「レベルが低かったので、値段下げていいですか?」と言って良いものか……? まぁ、今回はいくつかの外注さんに関してはそれを言ってしまったのだが……それほどまでにクオリティが低い外注さんがいたのである。
ただこちらにも責任があって、「その外注を選んだからには、その外注のクオリティをチェックしたんだよね?」という問題がある。もちろんチェックするのだが、相手が個人だったらそのチェックだけでよいのだが、相手が会社だった場合、その会社の誰が担当したかによってばらつきが出てきてしまい、今回は泣かされた。本来、会社で CG 彩色を受けるなら、その会社内でクオリティを統一させるべきなのだが、社内にうまい人と下手な人がいた場合、その統一は難しいだろうなぁとは想像出来る。というのも、CG 会社としてうまい人の絵をアピールしたいだろうし、かといって下手な人のヤツをうまい人のレベルに社内で修正していたら、それはうまい人だけが仕事をすることになってしまい、下手な人は仕事が回ってこないからだ。

まぁそんなこんなで、今後、外注さんに発注する前に「クオリティ」と「ギャランティ」の関係も説明しつつ発注する必要があるのかなと何となく感じている。じゃないと、結局 CG チーフの手が取られ、それはそのままコストに反映されるからだ。6/28 に発売したソフトなんかでは、そのクオリティの低い外注さんのおかげで、倍以上にもコストが膨らんだ CG も出てしまったほど……。はてさて、どうしたものやら。

彩色という役割

6/28 にボクが管理しているブランドの第一弾となる「サンタフル☆サマー」というのが発売された。ボクは作品のできについてはけっこう満足していて、気に入っている。ただしボクは中身には携わっていない。飽くまでもディレクタをちょっと補佐したくらい。この作品はディレクタやシナリオ・ライターの力によって出来あがった作品である。
2ch での評判もなかなかよく、ホッと胸をなで下ろしているところである。
ただ、エロゲ批評空間だと評価がそんなに高くないのよね……どうしてこんなに開きがあるんだろうか(汗)。

さて、この「サンタフル☆サマー」という作品、ひたすら彩色さんを巡る戦いだった。いや、その戦いをしていたのはボクだけだったのだろうが、とにかく彩色するひとに困ったのだ。彩色とはなにをする人かというと原画家が描いた絵に色を塗る人のことである。ただ一言に彩色と言ってもいろいろと役割がある。

  1. 色彩設計
    キャラクタ設定に色をつけて、色設定を作っていく
  2. 仕上げ
    彩色は一人の人間がやるわけではないので、色んな人がやった彩色を一つの作品として統一していく。
  3. 彩色
    1 の彩色設計を元に、原画に色をつけていく。

上の場合、1 と 2 はだいたい同じ人がやることが多い。この 1 と 2 をやる人のことを「CG チーフ」もしくは「CG ディレクタ」と言う。で、サンタフル☆サマーではこの「CG チーフ」の獲得に非常に困難を極めたのである。というのもこの CG チーフ、実は割に合わない仕事なのだ。
色彩設計をし、そして色んな人があげてきたバラバラの CG(いちおう設計図は渡すけれどもどうしても塗る人の個人差は出てしまう)を統一させる。さらに CG の発注などもこの CG チーフが請け負う。それでいて、給料って言うのは普通の彩色だけする人とそんなに差がない。3 万 ~ 5 万くらい。
さらに版権モノといわれる「パッケージ」「広告」「雑誌用の描き下ろし」「テレカ」「タペストリー」「抱き枕」などのでかい絵はだいたいこの CG チーフが塗る。
そして忘れてはならないのが、その作品の映像カラーを決めるのは CG チーフなのである。「あれ!? それは原画家さんの役目じゃ?」と思う人もいるかもしれない。ところが作品の映像的カラー(雰囲気、特色)は圧倒的に CG の手によるものが大きいのだ。
どんなに原画家さんがいい絵をあげてきても、CG さんのセンスが悪いととても悲しいことになってしまう。また逆に少々原画が下手でも、CG さんのセンスが良ければこれがなかなかけっこう見られてしまうのだ。え、具体例を出せって? いやね出せるんだけどさ、ボクがそれを出した瞬間、悪い方の例のメーカーさんはボクを目の敵にすること間違いなしなので出せないのよ(爆)。個人的にボクに聞いてくれれば、お答えします!(マテ

そんなわけで実は CG、特に CG チーフの存在ってのは非常に重要だし、ぶっちゃけてしまえばそのブランドのカラーを決めているのも CG チーフさんと言える。

なので原画家さんと同じくらい CG さんの名前はもっと出すべきだとは思っていて、そしてもっとユーザに CG さんは褒め称えられるべきなんてことも思っている。実は、ある作品が売れて、その作品の原画家とシナリオ・ライターが引き抜かれたんだけど、その後さっぱり作品が出ないとか、その後の作品が妙にレベルが下がったりなんてことはよくあると思うんだけど、アレの原因は CG チーフさんも引き抜かなかったからなんだよね。結局原画家ってけっこう CG に助けてもらっている所があるし、そもそも原画ではおかしくなかった絵も、塗ってみると実はおかしかったりすることがあって、そのために原画家や CG チーフが塗り上がったとに原画を直すなんてことは日常茶飯事なのだ。
どうして原画段階ではおかしくないのに、塗り上がるとおかしくなるなんてことがあり得るのかというと、これは塗ることによって陰影がつくことが主な原因だ。陰影がつくと人間の目は奥域を持った 3D 的解釈をする。すると実は手が短かったり、足の間接の曲がりが変だったり、身体のバランスがおかしかったりしているのに気付くのだ。なので改めて原画家さんや CG さんがその部分を直して塗り直したりしている。これが下手クソな CG が塗ると、陰影もデタラメになるため、よけいおかしくなり、原画そのものが崩壊したり、逆におかしな所に気付かなかったりして絵としてのクオリティが下がってしまうのだ。

でね、CG チーフ。去年の 10 月頃からずっと探し続けている。実はアテは 4 人あった。一人はものすごく忙しいので断られた。もう一人は原画家を目指しているということで断られた。残りの二人は「もう CG チーフはイヤだ」という理由で断られた。そう、CG チーフはたくさんの仕事がある割に、誰にも注目してもらえないし、給料も普通の彩色さんよりちょっと高いだけ。それならばその腕を活かして外注として食っていく方がよっぽどお金になるし、時間も自分でコントロール出来るのだ。
腕さえ良ければ、1 ヶ月で 40 万以上稼げる。さらに単価の高いところ(コンシューマ系や、リーフさんなどの有名どころ)を捕まえれば単価はもっと上がるのでさらに稼ぐことも出来る。ところが CG チーフとして社員でいるとせいぜい手取り 25 ~ 30 万が普通。下手をすると 20 万以下の所もあるんじゃなかろうか……。

そんなわけで、CG チーフの価値って言うのはもっと市場で高めていく必要があると思う。それこそ、原画家さんとタッグになるべきは、シナリオ・ライターではなく CG チーフなのだ。というわけで、ボクに CG チーフをください、おながいします<そこかよー